【今週の振り返り】ヨーロッパのリスクを消化し570円上昇した週

2016年12月10日 20:33

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イタリアのレンツィ首相は辞任したが、イベントは、通過すること自体が好材料。「もう済んだこと」にして引きずらず、日経平均は9日に19000円にタッチ。

 8日の日経平均は大幅に3日続伸。イタリアの銀行への公的資金投入のニュースでヨーロッパ市場は軒並み高。経済指標は消費者信用残高の伸びが市場予測を下回り、雇用動向調査(JOLTS)の10月の求人数は9月比約10万人減少。EUがJPモルガン・チェースに制裁金を課したり、英国政府がファイザーに罰金を科したり、トランプ次期大統領の薬価引き下げ発言でバイオ、ヘルスケア関連銘柄の株価が一斉に下がったり、おまけに原油先物が5営業日ぶりに50ドルを割り込んだりと悪材料が重なり午前中のNYダウはマイナス。ところが午後になるとなぜか〃猛反発〃しザラ場中の史上最高値を更新し、297ドル高で終値でも史上最高値更新。19000ドルの大台が近づいた。まるでトランプ・ラリーに〃魔法〃がかかったかのよう。英国からNYに来た青年のしわざ? アメリカの長期金利は反落し朝方の為替レートはドル円が113円台半ば、ユーロ円が122円台半ば。CME先物清算値は18630円。大阪夜間取引終値は18650円だった。

 日経平均始値は177円高の18674円。終値で高値引け。安値は0時39分の18614円。終値は268円高の18765円。取引開始前に10月の国際収支が発表され、経常収支は1兆7199億円の黒字で28ヵ月連続の黒字。ドル円レートがまだ103~105円台だった時期。11月上・中旬の貿易統計は3ヵ月連続の黒字。7~9月期のGDP改定値は設備投資がプラスからマイナスに変わり、速報値の年率換算+2.2%から+1.7%に下方修正されて、市場予測を下回った。

 しかし、日経平均始値は先物を20円以上も上回る177円高、TOPIXは1500の大台乗せ。日経平均は9時台前半に18700円台に乗せる。GDPの下方修正については「新基準が適用されたから」という言い訳をして、どこ吹く風で片付ける。そこのけ、そこのけ、ワルノリが通る。それでも9時台後半になると18700円を割る。10時台はドル円レートが円高方向に反転し、18600円台半ばまで後退。11時に三鬼商事から11月末の東京都心部オフィス空室率が発表され、3.75%で5ヵ月ぶりに悪化した。それも供給の一時的な増加による「特殊要因」と片付けられ、11時台も3ケタ高の18600円台半ばの水準を保ち、そのまま前引けに。

 昼休みにドル円レートが113円台前半まで円高が進み、後場は前引けよりも上げ幅を圧縮して再開し、安値を更新する。しかしそれでもプラス幅は3ケタでTOPIXは1500の大台を維持。1時台になると日経平均は18600円台半ばから後半に復帰。1時30分に東京商工リサーチから11月の全国企業倒産件数が発表された。前年同月比2.5%減の693件で3ヵ月連続で前年同月を下回った。増加したのは情報・通信、運輸、卸売など。2時に11月の景気ウオッチャー調査(街角景気)の結果が発表された。現状判断指数は前月比+3.2ポイントの52.5で2ヵ月連続の改善。先行判断指数は+1.6ポイントの53.0で5ヵ月連続改善。内閣府は基調判断を「持ち直している」から「着実に持ち直している」に上方修正した。2時台は再び18700円を超え、あとは最後までまたワルノリ。前日に続いてのソフトバンクと東京電力HD<9501>が大幅高でけん引し、どんどん高値を更新して高値引け。TOPIXもJPX日経400も日経平均先物日中取引も高値引けだった。日経平均は終値ベースの年初来高値を更新したが、ザラ場ベースの年初来高値は1月4日の大発会の18951.12円で、まだまだ遠い。

 新規IPOが1件。「GENOVIA(ジェノヴィア)」シリーズなど東京23区内の不動産投資用のワンルームを中心に新築マンションの企画、開発、販売及び管理を行うマンションデベロッパー、グッドコムアセット<3475>がジャスダックに新規上場。公開価格1950円より32.4%高い2582円の初値がついた。12月の新規IPOは今週、連勝で滑り出し。

 日経平均終値は268.78円高の18765.47円、TOPIX終値は+22.07の1512.69。売買高は28億株、売買代金は3兆3930億円の大商い。値上がり銘柄数は1414、値下がり銘柄数は485。プラスは31業種で、その上位は電気・ガス、証券、保険、その他金融、鉄鋼、情報・通信など。マイナスは医薬品、サービスの2業種。上海総合指数は0.21%安だった。

 9日の日経平均は4日続伸。ECB理事会の決定は量的緩和の買入額を月800億ユーロから600億ユーロに減額すると伝えられ「テーパリング(買入規模縮小)の開始か?」と思わせたが、それは2017年3月末までだった期間を12月末まで延ばす延長期間での話で、もともと白紙だった期間。買入ルールも見直し、国債の残存期間の条件を2年以上から1年以上に緩和した。ドラギ総裁は記者会見でヨーロッパで重要な選挙が続く2017年の政治リスクを念頭に「再延長も増額もありうる」「テーパリングではない」と発言し、ハト派の姿勢を明確にした。