【今週の振り返り】トランプ氏が大統領に当選し469円上昇した週

2016年11月12日 20:28

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投票日2日前、FBIはクリントン候補の捜査をやめたが、当選したのはトランプ候補。開票日は919円安、その翌日は1092円高。今週の東京株式市場は地獄も、天国も見た。

 7日の日経平均は3営業日ぶりの大幅反発。前週末4日に発表されたアメリカの10月の雇用統計の結果は、非農業部門雇用者数の伸びは16.1万人で市場予測の17.5万人をやや下回ったが、完全失業率は4.9%で前月比で0.1ポイント改善し市場予測と同じ。平均時給も25.92ドルで2.8%の増加は10年ぶりの高水準。非農業部門雇用者数も8月分、9月分は上方修正されており、全体的にみれば悪くない結果で12月利上げにフォローの風が吹いていた。

 アメリカの貿易統計も364.4億ドルの赤字で市場予測の378億ドルより良く、赤字額は1年7ヵ月ぶりの低水準。スターバックスの決算も良かった。しかしトランプ・リスクにはどうしても勝てず午後失速してマイナスに落ち、4日のNYダウ終値は42ドル安で7営業日続落。S&P500は革命後のイランの問題がらみ下落が続いた1980年以来36年ぶりの9営業日続落。CME先物清算値は16855円、大阪夜間取引終値は16890円だった。

 5日にフィッシャーFRB副議長の講演があり、「利上げの根拠は一段と強まっている」とタカ派の翼をバタバタ。ワシントンDC発で6日夜、日本時間7日朝に重大ニュース。FBIが「クリントン氏に訴追を求めない」と連邦議会に書簡を送ったという報道で、7日朝方の為替のドル円は一気に円安が進行。ドル円は104円台前半、ユーロ円は115円台半ばで、ともに前週末比で約1円の円安。日経平均先物は大幅高で始まり前週末比で300円を超える上昇をみせていた。

 日経平均始値は220円高の17126円。高値は2時19分の17186円。安値は9時56分の17056円。終値は271円高の17177円。取引開始前に9月20~21日の日銀会合の議事要旨が発表された。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、ETF買入枠の6兆円への拡大など、金融政策の変更が行われた回。日経平均現物は17100円台を回復して220円高で始まり、前週末比1.3%の上昇。TOPIXも1.2%上昇でスタート。前週からFBIに振り回されっぱなしのマーケットだが、東京でケリがつきそう。9時に9月の毎月勤労統計の速報値が発表された。実質賃金は0.9%増で前月比で0.3ポイント増加し8ヵ月連続プラス。デフレによる消費者物価の下落が効いたが、現金給与総額は0.2%増で名目賃金もプラスだった。9時台は17180円まで上昇するが売り物におされ17100円を割り込む。この水準では雇用統計の結果の織り込み程度の上昇幅。FBI書簡によるトランプ・リスク後退の効果はたった10分限り有効で、10時台は17100円前後で小動き。電通<4324>に厚生労働省のGメンが強制捜査に入った。為替のドル円も104円を割るが、11時台になると104円を超えて日経平均も17100円台で少し上昇し、前引けは230円高。

 後場は前引けより20円ほど高く再開し、17150円をはさんだ小動きが1時台もずっと続く。ドル円は104円台前半で安定。2時台に為替が104円台半ばまで円安に振れると日経平均は17200円に接近するが突破できない。前場はマイナスだった上海市場は後場プラスに転じたが、前週のトランプ・リスクによる下落分の巻き戻しの反発がそれほど強くないのは、大統領選挙は期日前投票分もあり9日に当落が確定するまでまだ安心できないとか、海外投資家はまだ週末で欧米市場の出方を待ちたいとか、今週はSQ週だとか、4~9月期の決算発表がピークを迎えているとか、前場大幅高で日銀買いが入らないなど、複雑な投資家心理がからんでいる模様。結局、最後まで17200円にはタッチできずに271円高で終了した。

 日経平均終値は271.85円高の17177.21円、TOPIX終値は+15.76の1362.80。売買高は17億株、売買代金は1兆9716億円で大台割れの薄商いに逆戻り。値上がり銘柄数は1489、値下がり銘柄数は423。プラスは31業種で、その上位は為替の円安を好感した輸送用機器を筆頭にガラス・土石、金属製品、機械、銀行、不動産など。マイナスは水産・農林、パルプ・紙の2業種。上海総合指数は0.25%高だった。

 8日の日経平均は小幅反落。「捜査は終了。クリントン氏は訴追しない」というFBI書簡で一斉リスクオン。全地球的にマーケットは「クリントン氏当選」を先取りし織り込みにいった。ヨーロッパ市場は全面高。週明けのNYダウは371ドル高。8営業日ぶりの猛反発で今年2番目の上昇率。終値18259ドルは1ヵ月ぶりの高値で、続落中のトランプ・リスクによる下落分を全て塗りつぶした。NASDAQ、S&P500は10営業日ぶりの反発。原油先物価格は反発したが、金先物も長期金利もVIX(恐怖)指数も全て反落。労働市場情勢指数(LMCI)はマイナス予測を良い方に裏切り0.7ポイント上昇。消費者信用残高も市場予測を上回った。リスクオンで外為市場でドルの買い戻しが進み、朝方はドル円が104円台半ば、ユーロ円が115円台半ば。もっともトランプ氏の「仮想敵国」メキシコの通貨ペソが対ドルで上昇したことは言うまでもない。CME先物清算値は17310円。大阪夜間取引終値は17260円。

 日経平均始値は65円高の17242円。高値は9時5分の17247円。安値は10時45分の17130円。終値は5.83円安の17171円。高く始まるが17300円にも17250円にも届かず、3ケタ高にもならず、前日に上昇を済ませた東京市場はクールな反応。前場は利益確定売りなのか下げ一方。10時台前半までプラスをなんとか保っていたが、後半からは小幅マイナスに。為替のドル円が104円台前半まで少し円高方向に進んだが、それよりも前日の大幅高の利益確定売りと「SQ週の火曜日」の要注意日であることが買えない理由か? 11時台はマイナス圏でやや持ち直し26円安で前引け。TOPIXが-0.37なので、日銀のETF買いが入るかどうかは微妙。

 後場はほぼ前引け水準で再開し、プラスにタッチしたかと思えばマイナスに押し戻され、前日終値をはさんで行ったり来たり。1時台はだんだん振幅が小さくなり、前日終値の数円の上下幅におさまる。TOPIXは小幅プラス。2時に9月の景気動向指数速報値が発表され、一致指数は+0.2ポイントの112.1、先行指数は-0.4ポイントの100.5。自動車など耐久消費財の出荷が良い。内閣府は景気の基調判断を「足踏みを示している」に据え置いた。終盤も前日終値プライマイナス10円以内の値動きが続き、売買も極端な薄商いで、アメリカ大統領選挙という大イベント直前の手控えムード。日経平均は小幅安、TOPIXは小幅高のまま大引けになった。日銀のETF買いの706億円は結局入らなかった。続落中はともかく、利益確定売りが入りやすい大幅高の翌日は、期待しないほうがいいようだ。

 前日に決算を発表し10兆円ファンドで孫正義CEOが大型買収を行うと予告したソフトバンクG<9984>は1.27%上昇。早朝に福岡市のJR博多駅前の道路で大陥没事故が起き、原因とされた市営地下鉄工事の共同事業体(JV)代表の大成建設<1801>は3.07%安。国内で1000名規模の人員削減を行うと報道されたニコン<7731>は1.29%上昇。リストラを好感して株価が上がるから兜町は人の恨みを買ってしまうのだが……。