需要が加速するセンサ市場。アプリケーションの進化とセンサの小型・高性能化

2016年12月23日 19:35

画.医療機関の8割で導入予算・運用予算が1000万未満 医療分野のICT化に課題

近年、様々なアプリケーションにおいて、センサの重要性が増している。医療・ヘルスケアなど様々な場面で使用される機械や部品、機器類において、センサは今や欠かせないものになった

 近年、様々なアプリケーションにおいて、センサの重要性が増している。インフラや環境管理、気象観測、産業機械などの分野だけにとどまらず、自動車や流通、医療・ヘルスケア、農業に至るまで、様々な場面で使用される機械や部品、機器類において、センサは今や欠かせないものになった。また、スマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末など、個人でも身近に電子機器の端末を持ち歩くようになったこと、さらにはモノのインターネット、IoTの普及もあり、センサ市場は急成長しているのだ。

 富士キメラ総研の予測によると、2019年度のセンサ世界市場の規模は2014年度比で21.4%増となる5兆5576億円。センサ個数は2014年度比34.4%増となる418.6億個。数字だけを見ても、驚くべき成長率であることが分かる。

 その中でも、とくに需要が伸びているのが、医療・ヘルスケア分野だ。専門的な医療機関だけでなく、健康ブームを背景に、ヘルスケア系のアプリで毎日の体調管理や運動記録などを行っている人が増えており、それに伴って、関係するメーカー各社も精力的に製品開発を進めている。

 例えば、日立製作所が開発した「ライフ顕微鏡」などがある。この製品は、加速度センサや脈波センサ、温度センサなどを組み込んだリストバンド型の生活モニタ装置で、普段の生活に伴う動きや脈拍、体温の変化を24時間365日連続して収集及び解析してくれる。解析されたデータは、「ライフタペストリー」と呼ばれるグラフで表示されるので、視覚を通して直観的かつ客観的に理解しやすくなっている。

 アプリケーションだけでなく、その機能や技術を支えるセンサそのものも、小型で高性能な製品の開発が進んでいる。例えば、需要の増しているセンサの一つに振動検知や衝撃検知を行う加速度センサがある。ロームのグループ会社であるKionix社(ニューヨーク州イサカ)が開発した小型加速度センサ「KX222 / KX224」は、±8G(ジー)、±16G、±32Gの3つの検出範囲が設けられており、アプリケーションのニーズにあわせて検出範囲の設定が可能だ。一般的に加速度センサは±20G 未満の加速度が測定できる場合は重力や傾きの検知に、またそれ以上の場合には衝撃検知に適したセンサとされているが、検出範囲が広がれば当然、用途も広がる。さらに、Kionixが長年培った MEMS 生産技術によって実現したMEMS構造によって、耐衝撃性・耐久性にも優れ、振動検知など過酷な環境下でも正確な動作が可能という特長から、ランニングシューズ、産機用モータ、洗濯機等、幅広いアプリケーションへの供給が見込まれているという。

 Kionix社の加速度センサに限らず、センサ業界では今、小型で搭載スペースが少なく、高性能なセンサが求められている。センサの小型・高性能化は、アプリケーションの進化にも直結するものだ。国内だけでなく、世界的に拡大するセンサ関連市場のシェアを獲得するためにも、日本の技術力に期待したい。(編集担当:松田渡)