金融庁は10月に金融行政方針を発表した。その中で銀行が行員に対し過大なノルマを課していることを指摘。不要な投資商品を販売せず、顧客本位のサービスを提供するために、業績目標の評価方法なども検討していくという。今後、手数料情報の開示や商品説明資料の改善を行なうと同時に、ノルマが過大ではないか、評価方法が顧客利益を優先する方向になっているかを金融機関に調査する方針だ。
銀行では過大なノルマが行員に課せられるケースが多く、営業成績をあげるために顧客に不用な金融商品を買わせるということが問題視されている。投資商品や保険、クレジットカードなどさまざまな商品にノルマが課せられて、達成できなかったら自分で購入する「自爆買い」をするケースもあるという。過大なノルマがあることによって、行員は顧客サービスの向上よりも利益優先に走ることは至極当然であろう。
銀行側でもノルマを廃止して顧客本位のサービスを提供しようという動きにシフトしつつある。金融庁の方針発表に先駆けて金沢市の北国銀行<8363>は昨年4月から全国で初めて営業目標を撤廃。大分銀行<8392>も昨年10月から試験的にノルマ撤廃を行なった結果、目標を撤廃しても収益は低下せず、地域に密着した営業で顧客からの評価も上がったという。今年4月からは全店舗の半数にあたる49店舗で、10月からは残りの店舗にも拡大させ、段階的にノルマ撤廃を進めている。
岐阜市の十六銀行<8356>も来年4月から全ての店舗や渉外担当に対するノルマを撤廃する方針を出している。目先の利益を追求するよりも、顧客との信頼関係を構築し、中長期的に収益を上げる体制を強化したい考えだ。同行も今年春から目標数字の撤廃を試験的に導入しており、利益の落ち込みもなく、行員にも顧客との関係構築を重視する意識が高まったため、ノルマ撤廃を決断した。
ノルマを廃止する銀行は全国で上記の3行だが、ノルマを撤廃したことで利益の低下は見られず、顧客の評価や行員の意識も上昇している。金融庁が方針発表をしたことによって、今後同様の動きが他行にも広がっていくと思われる。利益追求ではなく、真に顧客と向き合い、ニーズに合った商品の提供が期待される。(編集担当:久保田雄城)