防衛省は「宇宙領域防衛指針」をまとめ、28日発表した。中国、ロシアなどの動きを念頭においたとみられ「宇宙領域における作戦が陸上作戦、海上作戦、航空作戦と同等の重要性を有するようになっている」とし航空自衛隊を2027年度までに『航空宇宙自衛隊(仮称)』とする必要や「宇宙領域における防衛能力強化の方向性を示し、省内関連施策の一貫性の確保と部内横断的な検討を促進する」とした。
また民間企業の関連技術への投資を後押しすることで防衛力強化と経済力強化の好循環を実現するとし「他省庁の研究開発支援プログラムと安全保障の取組みとの連携を強化」。宇宙技術戦略等の政策文書に防衛省・自衛隊のニーズを反映するなど防衛産業育成を経済強化につなげる考えを鮮明にした。
指針では中国に関し「長距離精密打撃に資する目標の監視・追尾や通信のための衛星コンステレーション構築で軍のC4ISR能力を急速に向上」とし、ロシアに関して「ウクライナ侵略で民間の商用衛星画像や通信衛星コンステレーションの民間力の活用が戦況に大きな影響を与えている」とした。
指針では(1)「スタンド・オフ防衛能力」確保の観点から常時継続的な目標情報の探知・追尾能力の獲得を目的とした衛星コンステレーションを構築(2)セキュアで大容量の通信を可能とする衛星間光通信やオンボードでのAIによる目標識別といった先端的技術の確立(3)衛星コンステレーションによる地球低軌道からの観測に加え、静止光学衛星等の常時かつ広範囲の観測が可能となる、より高い軌道における観測衛星の整備を検討する、とした。
また(4)赤外線センサーの宇宙観測実証や地球背景データ取得、赤外線以外も含めたセンサー等の国内技術向上(5)米国で進展している衛星コンステレーション計画との連携をはじめとした日米協力の深化(6)戦況の可視化へ衛星取得データを含めた膨大なデータをAIにより即座に処理し、デジタルツインを用いて各級指揮官等にリアルタイムで直感的に使用可能な情報を提供できる環境整備を検討する、とした。
このほか(7)在日米宇宙軍新編も踏まえ、日米共同による領域横断作戦を円滑に実施するための協力や相互運用性を高めるための取組みを一層深化させるとした。(編集担当:森高龍二)