2014年(4件)、2015年(4件)、2016年(2件=9月末時点)と続いている金融庁の監査法人に対する処分は、それら監査法人のクライアントになっている上場企業の実態を知るうえでの重要な事実となるとともに、クライアント企業の信用にも大きな影響を与える。そうしたなか、上場企業の会計監査を行っている監査法人の異動状況はどのようになっているのだろうか。
帝国データバンクは 2016年(1月~9月)に会計監査人(監査法人)の異動を適時開示した国内上場企業について、株式市場や監査法人の名称、異動理由について調査した。
それによると、2016年(1月~9月)に会計監査人の異動を発表した国内上場企業は131社。株式上場している市場別に見ると、「東証JASDAQ」が41社(構成比 31.3%)で最も多く、以下、「東証1部」(40社、構成比 30.5%)、「東証2部」(27 社、同 20.6%)、「東証マザーズ」(14社、同 10.7%)が続いた。
東京証券取引所のデータによると、2016年9月30日時点の各市場の国内上場企業数は、東証JASDAQ(719社)、東証1部(1982社)、東証2部(535社)、東証マザーズ(232社)。これら各市場の異動率(異動した社数÷上場企業数)は、東証JASDAQ が5.7%、東証1部が2.0%、東証2部が5.0%、東証マザーズが6.0%となり、マザーズ、東証 JASDAQ の新興市場で高くなっていることが分かるとしている。
131社の新たに就任した監査法人を見ると、監査法人の吸収合併により就任企業が増加した「明治アーク監査法人」が21社で最も多く、以下、「有限責任あずさ監査法人」(16社)、「PwCあらた有限責任監査法人」(15社)、「有限責任監査法人トーマツ」(9社)、「東陽監査法人」(7社)と続いた。
131社の退任(または辞任)した監査法人を見ると、「新日本有限責任監査法人」が39社で最も多く、全体の29.8%を占めた。以下、「有限責任監査法人トーマツ」(18社)、被合併に伴う「アーク監査法人」(10社)、「有限責任あずさ監査法人」、被合併に伴う「聖橋監査法人」(各8社)と続いた。なお、最多となった「新日本有限責任監査法人」は、“東芝の平成22年3月期、平成24年3月期、平成25年3月期における財務諸表の監査において7名の公認会計士が相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務諸表を重大な虚偽のないものとして証明した”として、2015年12月に金融庁から契約の新規の締結に関する業務の停止(3月)および業務改善命令(業務管理体制の改善)の処分を受けており、既存顧客企業の異動の大きな要因になっているとみられるという。
131社の異動理由について分類すると、「契約の任期満了」が78社(構成比59.5%)で最多となり、以下、「監査法人の合併」(24社、構成比18.3%)、「監査法人より継続不可の申し出など」(21社、同16.0%)が続いた。(編集担当:慶尾六郎)