海外旅行の魅力は自分の知らない世界を知ること。さまざまな国籍・文化・宗教が混在しているので考え方や生活習慣に驚くこともある。そのような中で「発見」や「気づき」を重ねていくことで自分の視野が広がっていき、帰国後の生活にも活かせるだろう。
インバウンドや「爆買い」に沸いた2015年の旅行業界。今年に入りその熱は冷めてきたようにも見受けられる。しかしふたを開けてみれば16年の訪日外国人観光客数は10月末時点で約2011万3000人。15年が1978万人だったから、なんと2か月を残して昨年を上回っているのだ。政府が当初目標としている年間2000万人を突破したのは初めて。国籍の内訳を見るとトップの中国で551万人(15年は499万人)、2位の韓国で417万人(同400万人)などアジア各国の伸びが牽引した。観光庁は最終的には2400万人前後になるとの見通しを示している。
オンライン予約サイト・エクスペディアの調査によると、都市別の人気増加率1位は北海道新幹線開通で話題になった函館で、前年から約160%増。同社は「国際的に知名度が低いエリアではあるものの、プロモーションへの投資が功を奏したと」としている。日本交通公社の担当者も、「関東に集中していた訪日需要が北海道など地方にも分散している」と今年の傾向を見る。しかし純粋な人気ランキングでは沖縄を除くと相変わらず東京、京都、大阪、福岡などの大都市が並んでいる状態。「都市部と地方を比較した場合、構成比に大きな変化はない」という声も根強い。
この調査では20代と30代の女性の訪日客が顕著に増加していることも確認された。韓国やタイからは「友人同士」の旅行が多かったことも分かっている。政府が掲げる「2020年に訪日外国人4000万人」という目標を達成するためには、このあたりも今後のヒントになってきそうだ。
一方、日本人の海外旅行はどうだったのだろうか。ことしの日本人出国者は10月までで1416万8898人。過去最高を記録した2012年(1849万人)以降は国際情勢や感染症の発生、円安などの影響で低迷しており、まだ持ち直したとは言いがたい状況だ。主要旅行会社のパッケージ商品も「フリープラン・自由行動タイプのパッケージツアー」「添乗員・現地ガイド同行型の食事・観光付きパッケージツアー」ともに取扱人数の前年割れが続いている。
たとえば旅行大手・KNT-CTホールディングスの10月取扱額実績を見てみると、団体旅行合計で20.4%減の36億1514億円となっている。企画旅行もクラブツーリズムが7.3%減の56億8575万円、近畿日本ツーリストが1.8%減の12億5041万円といずれもマイナスに。同社は昨年に引き続きテロの影響があるとしている。
しかしJNTOの推計によると、日本人出国者数自体は4月から最新のデータである10月までは5か月連続で前年同月を上回っている。10月の日本人出国者数は145万8000人(前年同月比3.2%増)で、このペースでいけ2013年以来の1700万人突破が見えてくるかもしれない。なお10月は韓国、台湾、香港、マカオ、タイ、ベトナムなどアジア各国が前年同月比増となった。特に韓国を訪れた人は22万7000人と前年同月から26.0%も増えた。定番のリゾート地・ハワイも13万5000人(同+2.7%)と4か月ぶりにプラスとなっている。
人数を押し上げているのは、FIT(エフアイティー)と呼ばれる個人旅行だ。個人で航空券やホテルを別々のサイトや店舗で予約購入した旅行やダイナミックパッケージが含まれている。飛行機の便やホテルを自由に選べることが最大の魅力で、「ホテル独自の割引を使いたい」「宿泊は現地の友人の家で」といったことが可能になる。
JTB総研が行った調査によると。16年1月~5月に海外旅行をした人の旅行目的は「観光旅行・レジャー」(74.6%)が最多で、次点が「家族・友人訪問」(13.7%)。2・3月は学生、3・4月は60歳以上の女性、5月は15~29歳男女の割合が高く、同社は若い世代の男女とシニア女性が市場を牽引し、ここ数年で縮小した観光需要が戻っていると推察している。(編集担当:久保田雄城)