過去1年間に介護離職者が724社で発生 将来的に介護離職者が増えると考えている企業は約7割も

2017年01月06日 08:58

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東京商工リサーチが実施した「介護離職」に関するアンケート調査(有効回答7,391社)で、過去1年間に介護離職者が724社(構成比9.8%)で発生していたことがわかった

 政府は、親族の介護を理由にした離職や転職などの「介護離職」のゼロを目標に掲げている。日本は人口減少のスピード以上に生産年齢人口が減る可能性が高く、GDP600兆円の達成には介護離職をいかに抑え、働き手を確保できるかが重要になっている。

 2015年8月に介護サービス利用の自己負担の割合が1割から一部の人は2割に引き上げられた。また、2015年度には介護給付費が10兆円を突破した。今後も介護給付費の増加が見込まれており、「社会保障費」の抑制が急務になっている。しかし、過度な抑制は介護サービスの質の低下や利用率の減少に直結しかねず、「介護離職」ゼロと「社会保障費の抑制」のジレンマを抱えながら難しい舵取りを迫られている。

 東京商工リサーチが実施した「介護離職」に関するアンケート調査(有効回答7,391社)で、過去1年間に介護離職者が724社(構成比9.8%)で発生していたことがわかった。また、将来的に介護離職者が増えると考えている企業は5,272社(同71.3%)で約7割にのぼった。自社の「仕事」と「介護」の両立支援への取り組みは、約7割(5,358社、同72.4%)が不十分と認識しており、企業の「介護離職ゼロ」への歩みは端緒についたばかりのようだとしている。

 全企業では、「ある」が724社(構成比9.8%)、「ない」が5,612社(同75.9%)で、介護離職者は全体の約1割の企業で発生している。資本金別では、1億円以上の大企業で、「ある」が244社(同11.3%)、「ない」は1,150社(同53.5%)だった。1億円未満の中小企業では、「ある」が480社(同9.1%)、「ない」が4,462社(同85.0%)だった。従業員の多い大企業ほど、中小企業より介護離職者の発生割合が高かった。

 Q1で「ある」と回答した724社のうち、介護離職者の人数について545社から回答を得られた。介護離職者数の最多は、「1名」の388社(構成比71.1%)で7割を占めた。資本金別では、1億円以上では150社のうち、最多は「1名」の93社(同62.0%)。1億円未満では、395社のうち「1名」は295社(構成比74.6%)だった。ただ、「6名以上」は、資本金1億円以上が2社(同1.3%)に対し、同1億円未満は6社(同1.5%)あり、離職者数別でみると介護離職は中小企業ほど深刻な状況にあるようだ。

 全企業で最多は、「増えると思う」が5,272社(構成比71.3%)と約7割を占めた。次いで、「変わらないと思う」が1,866社(同25.2%)。資本金別では、「増えると思う」は1億円以上が1,661社(構成比77.3%)だったのに対して、1億円未満では3,611社(同68.8%)で、大企業が中小企業より約10ポイント高かった。「減ると思う」は、資本金1億円以上では22社(同1.0%)、1億円未満では49社(同0.9%)でいずれも少数にとどまった。

 Q3で「増えると思う」と回答した5,272社のうち、最多は「従業員の高齢化に伴い家族も高齢化しているため」で4,318社(構成比81.9%)と約8割を占めた。次いで、「現在の介護休業、介護休暇制度だけでは働きながらの介護に限界があるため」の3,060社(同58.0%)、「公的な介護サービス縮小による従業員の介護負担増」の1,821社(同34.5%)と続く。「その他」では、「独身、未婚者が多い」が21社(同0.3%)、「核家族化と共働きの増加で介護を担当できるものがいない」、「一人っ子が多いため、兄弟でサポートすることができない」などだった。(編集担当:慶尾六郎)