矢野経済研究所では、自動運転システムの世界市場について調査を実施した。米国運輸省高速道路交通安全局(NHTSA ; National Highway Traffic Safety Administration)は、自動運転システムの自動化レベルを0~4までの5段階で分類している。レベル1は運転支援機能であり、現在普及の進んでいるADAS(先進運転支援システム)が該当する。レベル2は部分的な自動化であり、操舵や加減速のうち複数の運転支援を実行し、他の動的運転作業はドライバーが行う。レベル3は条件付自動化であり、自動運転システムが全ての動的運転作業を実施し、緊急時においてはドライバーが介入する。レベル4については完全自動運転としており、自動運転システムが全ての動的運転作業を実施し、ドライバーはいかなる状況においても運転作業に関与しない。
日米欧で搭載が活発化しているレベル1の ADAS(先進運転支援システム)の世界市場は堅調に推移し、2015年の新車における搭載台数は1,354万4,120 台であった。また、TESLA Model Sが2015年から指示器操作による自動車線変更機能の採用を開始しており、レベル2(部分的自動運転)の市場規模は5万880台となる。レベ2の部分的自動運転については、高速道路の渋滞時における自動追従、自動駐車、自動車線変更(指示器操作による認証式)の機能の実用化が始まっており、2016年はM-Benz E クラス、日産セレナでも採用を開始している。
レベル2については、同様の機能を搭載した車両が日米欧の主要メーカから 2017年から2020年にかけて市場投入される予定であり、同レベルの2020年の世界市場規模は509万5,000台になると予測する。2020年以降は各種センサのコストダウンが進み、ミドルクラスへの搭載も期待されるために、2025年の世界市場規模は2,381万 2,000台を予測する。また、時速 10km(10km/h)を超える自動操舵の法整備については国連欧州経済委員会の下部組織 WP.29(自動車基準調和世界フォーラム)で進んでおり、2018年以降に具体的なガイドラインが示される見込みである。このため、2020年以降に高速道路を中心としたレベル 3(条件付自動運転)の自動運転システムの搭載が活発化し、高速道路上のハンズフリーによる自動運転が実現される見通しである。国内では2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一つの公開機会として、日系自動車メーカはフラッグシップモデルに高速道路中心のレベル3の自動運転システムを搭載する計画である。レベル3の2020年の世界市場規模は、システムコストが高く搭載車種が限定されるために、14万5,000台に留まるが、2025年には626万7,100台に拡大すると予測する。
2030年の自動運転システム世界市場規模は、新車における搭載台数ベースでレベル2が2,798万台、レベル3が1,786万7,000 台、レベル4が 224万4,400台に成長すると予測する。レベル1の市場規模をレベル2が2030年に上回り、日米欧ではミドルからコンパクトクラスまで搭載車種が広がるものとみるとしている。(編集担当:慶尾六郎)