米自動車大手でビッグスリーの一角であるフォード・モーターは年明けの3日、マーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)が、メキシコ工場新設計画を撤回すると発表した。フィールズ氏は、1999年に傘下だったマツダの社長に就任し、立て直しに成功、マツダ黒字化を達成して2002年にフォードに復帰した人物だ。
フォード・モーターはメキシコでの新工場建設を取りやめ、米ミシガン州の同社工場で電気自動車(EV)と自動運転車を生産するとした。フォードは新工場で小型車を生産し米国に逆輸入する計画だったが、トランプ次期米大統領はこれを「恥知らず」と批判。また、大統領就任後にメキシコからの輸入車に高い関税をかけると公言していた。
国内雇用を最優先するトランプ米次期大統領の批判を受けて方針転換したフォード。トランプ氏は同日、米最大手のゼネラル・モーターズ(GM)にも矛先を向け「米国で生産しろ。さもなければ高関税を払え」と自身のツイッターに投稿した。
フォードは16億ドル(約1800億円)でメキシコに4拠点目となる新工場をサンルイスポトシ州に建設し、2018年から欧州フォードが設計する欧州で人気モデルの小型乗用車「フォーカス」を生産する計画だった。しかし今回、フィールズCEOがミシガン州のフラットロック工場で労働組合幹部とともに記者会見し、計画を撤回する方針であることを表明した。
同工場は現在、スポーツカーのマスタングと上級セダンのリンカーンを生産しており、2020年以降に新開発EVと自動運転車を生産する予定だった。フィールズ氏は撤回の理由について言及せず、「フォードはグローバルな自動車メーカーだが、本拠地は米国だ」と述べるにとどめたという。フォード社は昨年、日本市場における営業販売からも撤退している。
フラットロック工場への新規投資額は7億ドル(約823億円)で、新たに700人を雇用する。この件にはミシガン州から補助金が出るとみられる。メキシコのサンルイスポトシ州での小型車向け工場の新設は撤回する。
今回のフォードの発表にトランプ氏は自身のツイッターで、「雇用や富を国外に持ち出す代わりに、米国は世界の革新と雇用創出を引きつける場所になる」とツイートし、自らの成果として誇らしげに述べている。
北米自由貿易協定(NAFTA)に参加するメキシコは、北米向けに輸出できる自動車工場のメリットをアピールして工場を誘致してきた。トランプ氏は大統領選挙中からフォードに照準を合わせ、メキシコからの輸入車に35%の高関税を課すと声高に叫んでいた。
トランプ氏は次期大統領の立場を振りかざし、国外に生産拠点を設ける米国企業への介入を続けている。既に、空調大手キャリアに直談判してメキシコへの工場移転計画の一部を撤回させた。今後、メキシコに生産拠点を持つ日本勢自動車メーカーや独フォルクスワーゲンなどへの影響も懸念される。(編集担当:吉田恒)