【今週の展望】「就任演説待ち」するほど世界はヒマではない

2017年01月15日 20:29

EN-d_300

トランプ新政権の経済政策が示されるのは、20日の就任演説か、1月中の一般教書演説。だがマーケットは、そこまで待てないはず。リスクを意識したまま、活発に動き出す。

 13日終値時点のテクニカル指標を見ると、ボリンジャーバンドはニュートラル中のニュートラルで、オシレーター系指標は「やじろべえ」のような均衡状態にある。だから上値はボリンジャーバンドの25日線+1σの19529円、下値は-1σの18936円を想定するのが基本線になるだろう。

 ただし13日終値から-1σまでは、座りのいい25日移動平均線19233円、「まぼろし」ではなかったが13日に算出されたばかりの1月SQ値19182円、心理的な節目で売り、買いのポジションも集中する19000円と、下値支持線になりそうなラインが3本もある。NY株安や為替の円高で前場マイナスになると日銀のETF買い703億円も律儀に入ってくる。それらを考慮すると、終値ベースでは19000円で下げ止まりになるとみる。前週は大幅安を喫する場面が何度もあったが、下は19069円止まりで19000円の大台を一度も割っていない。直近では12月30日の大納会で9円足らず、割り込んでいただけである。

 一方、上値のほうはテクニカル的にみて、13日終値から25日線+1σまでの間に強い上値抵抗線(レジスタンスライン)になりそうなものが見当たらない。19308円の5日線の抵抗力はもともと弱く、強いて挙げれば売り買いのポジションが多い19500円だろうか。前週はザラ場に19500円を抜いてその上に出たことは一度もなかった。

 今週、19500円も25日線+1σの19529円も超えてさらに高値追いするには、ドル円が116円台、117円台になるような為替レートのドル高円安の支援がどうしても必要だが、それが期待できない。理由の一つは20日にアメリカのトランプ新大統領の就任式を控えての「就任演説待ち」で、前週の記者会見で経済政策への言及が少なかったので、よけいに様子見されてしまう。もし就任演説で経済政策をパスされたら、1月中の連邦議会での一般教書演説まで待たされる。もう一つの理由がアメリカ主要企業の決算発表で、株価が業績見通しに比べて背伸びしているので、ちょっとした不安でドル安になりやすい。さらに言えば、年末年始に発表されたアメリカの経済指標は、労働関連指標も含めて良くないものが散見されていた。アメリカの景況は、ドルが高値追いできるほど盤石ではない。SQ明けで国内には大きな経済指標もイベントもないので、今週はアメリカ次第、為替レート次第の色彩が濃い週だろう。

 ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは19000~19500円とみる。大きく下げれば日銀買いに支援された押し目買いが入り、逆に高値追いすれば利益確定売りで頭を抑えられるという週になりそうだ。

 トランプ次期政権のキャッチフレーズは「アメリカ・ファースト(America First)」。アメリカに投資すればほめられ、メキシコに投資すればまるで悪魔のように糾弾される。その政策に年3回と想定されるFRBの利上げが加わって起きるのは、新興国からアメリカへの資金の逆流、新興国経済の弱体化、通貨安、株安だ。すでにメキシコは通貨ペソ安に苦しみ、経済不安から暴動も起きている。もし同じことが、トランプ氏がメキシコ同様に貿易不均衡国と認定し敵視する中国でも起きれば一体どうなるかと思えば、限りなく恐ろしい。今年、アメリカの政策が経済面でも、地政学的にも「中国リスク」を高めてしまい、それによって日本が苦しむというシナリオも覚悟しなければならないのだろうか?(編集担当:寺尾淳)