日本共産党は機関紙赤旗15日付けで、政府が20日召集の通常国会に提出・成立を目指す「組織犯罪処罰法改正案」について「一般の方々が対象になることはあり得ない」と菅義偉官房長官が記者団の質問に答えていることなどに触れ「人権抑圧と思想弾圧で猛威を振るった『元祖』治安維持法が施行される際にも(当局により)同じような説明が振り撒かれていた」と当時の東京朝日新聞の記事(1925年5月8日付け)を紹介し、今回の法案の危険性を強く訴えた。通常国会で過去3回廃案となった共謀罪同様に、再び熱い戦いになるもよう。
それによると「当時の警視庁の説明として『労働者や思想家たちはあまりにこの法案を重大視し、悲観的に考えているようであるが(中略)伝家の宝刀であって、余り度々抜くつもりでもない』。こう報じていた」とし、「警視庁は『今の時代精神とかけ離れたような旧式の取り締まりもできませんよ。だから世間の人が心配するほどのものでなく、この法のために今の社会運動が抑圧されるなどということはないだろう』と説明していた」と紹介。
また当時の内務省警保局長の話として「われわれの方でも運用については非常に注意し純真な労働運動や社会運動を傷つけないように心がけている」という発言を東京朝日新聞が報じていることも紹介した。
そのうえで、実際に法を施行すると「日本共産党や労働運動や農民運動、文化活動や宗教者の集まり、つづり方教育といった教育実践など、国民生活のあらゆる分野に弾圧の手を伸ばした」とし、法が運用された結果「治安維持法による逮捕者は数十万人を超え(28~45年)、送検された人は7万5000人(同)となっている。同法の弾圧が原因で命を落とした人は、わかっているだけで1682人となっている」と伝えた。日本共産党機関紙は「一般の方々が対象になることはあり得ないとする菅長官の説明が方便にすぎないことがわかります」と危険性を提起した。
政府が提出しようとしている法案については、社民党も「既遂の処罰を原則とする刑法の基本原則を大きく変えるもので、対象犯罪も『懲役・禁錮4年以上の刑が定められた重大な犯罪』としたため、犯罪の数が676にのぼり、600以上を規定したかつての政府原案(共謀罪)と変わりない」と断固反対の姿勢を明確にしている。
民進党の蓮舫代表は「対象犯罪が600を超える数あり、中には公選法(違反)などテロと全く関係のない法律(違反)も含まれている。国民が常に監視下に置かれるのではないかという不安の声がこれまで強くて、過去3回(共謀罪は)廃案になっている。過去の経緯を踏まえてどういうふうに改善されているのか中身をもう少し見てみないと党として判断するには時期尚早と思う」と慎重に中身をみる必要があるとの姿勢だ。(編集担当:森高龍二)