車両安全システム提供のイスラエルMobileyeは、ラスベガスで開催の「CES2017」にて、独BMW、米Intelと共同で自動運転の試験走行を行うことを発表した。試験走行では混雑している高速道路やロータリー、交差点などでの強化学習によるシステムの有効性を検討すると見込まれる。
車両安全システム提供のイスラエルMobileyeは、ラスベガスで開催の「CES2017」にて、独BMW、米Intelと共同で自動運転の試験走行を行うことを発表した。試験走行では混雑している高速道路やロータリー、交差点などでの強化学習によるシステムの有効性を検討すると見込まれる。強化学習は囲碁の分野で人間の能力を超える目覚ましい成果を出し、その有効性を世間に示した。強化学習では、人の手によるプログラミングではなく、学習するための具体的な例がコンピュータに与えられ、特定の結果につながる動作を参照して、自らアルゴリズムを生成する。自動運転における目標とは、安全かつスムーズに交通の流れに割り込むといったものになる。
同社はすでにバルセロナで開催のAI会議にて、2つの仮想高速道路が交差する地点で、数台の自動車が同時にもう一方の道路へ合流するといったシミュレーションを披露している。微妙な運転技術を実装するには、交通ルールに従うだけでは機能しない場合が出てくる。実世界の運転環境では他のドライバーの様子を察して、「割り込むか、待つか」判断するような状況が頻繁に発生している。自動運転での強化学習の精度を高めるには、自分の車両の経験からだけでなく、他のドライバーからも学ぶことが重要となる。このことから同社では、車両から収集されたデータを異なる自動車メーカー間で共有できるようなプラットフォームを開発中とのこと。
CES2017では、学習する自動運転車に関する出展が相次いだ。米NVIDIAの人工知能を搭載した独Audi「Audi Q7 deep learning concept」のデモンストレーションは、ルートと周辺状況といった限られた情報しか持っていない状態から、ドライバーの反応や周辺の観察により、運転に必要な判断を学習していくというもの。深層強化学習という技術に近いモデルを採用し、人の脳に似せた神経回路網(ニューラルネットワーク)が特定の用途のために強化学習を行う。また、Preferred Networksの技術を応用したトヨタ「FCV PLUS」のデモンストレーションは、最初はぶつかっていた自動車が学習を繰り返すことでぶつからなくなるというものだった。
完全自動運転車の普及までには、さまざまな運転レベルの自動車が入り混じるといった複雑な状況が生じると予想され、特定のルールに基づいた走行はかえって危険となる。安全を優先するにはルールを一時的に破るような判断も必要となり、そのための学習精度向上が自動車メーカーにとって必須となってくると考えられる。(編集担当:久保田雄城)