メタボで胆石が増えるメカニズム

2017年02月05日 12:49

 胆石は欧米では成人の10-20%、日本を含む東アジアでは5-10%と非常に有病率の高い疾患である。また、予後が不良な癌のひとつである胆のう癌の危険因子であることが報告されている。一方、近年増加の一途をたどっているメタボリックシンドローム患者では、脂肪肝に伴って胆石症が発症しやすいことが知られていたが、その理由は明らかとなっていなかった。

 東北大学大学院医学系研究科の糖尿病代謝内科学分野山田哲也准教授、浅井 洋一郎医員、片桐秀樹教授らのグループは、同消化器病態学分野、同病理診断学分野、東北大学病院薬剤部 山形大学医学部内科学第二講座、東北大学加齢医学研究所分子腫瘍学研究分野らとの共同研究により、メタボリックシンドロームで胆石が増えるメカニズムを、遺伝子改変マウスを用いて解明した。

 研究グループは、メタボリックシンドロームに伴う脂肪肝の状態では、肝臓内の血流が低下し肝細胞が酸素不足におちいることに着目し、ノックアウトマウスを用いて研究を進めた。肝臓内脂肪蓄積により、肝細胞では、酸素不足が生じ低酸素誘導因子(HIF-1α)が誘導・活性化されることで、胆汁への水分を供給するタンパク質(アクアポリン 8)が減少し、その結果、胆汁が濃縮されてコレステロールが析出し、胆石形成が促進されることが明らかとなりました。さらに、メタボリックシンドロームに伴った脂肪肝を有する患者の肝臓生検サンプルを用いた検討 対照群 ノックアウト群 でも、胆石を有する患者では、肝臓の HIF-1α が増加していることも発見した。

 このことから、マウスの結果がヒトでも裏付けられ、ヒトの胆石の原因として、脂肪肝に伴う肝臓の酸素不足が重要であることがわかった。今後、肝臓の低酸素に介入することが、脂肪肝に伴う胆石の治療、ひいては胆のう癌発症の予防に繋がる可能性が考えられるとしている。(編集担当:慶尾六郎)