今週の振り返り 建設、不動産、金融の次にきた「自動車の週」
前週末のNYダウは45ドル高だったものの、19日の朝方はドル円8Ⅰ円台前半、ユーロ円103円台後半と為替は16日朝とほぼ同じ水準で、円安進行は止まった。日経平均が2日で4.1%、359円も上がり9000円台を回復した前週末を受けて、上がりすぎ警戒感から日経平均は「調整局面」でスタートするかと思われた。ところが新規の海外機関投資家の買いも集まって9141円、117円高の3ケタ上昇でスタートし、その後はさすがに利益確定売りが入って安値が9135円まで切り下がったが、売り買いが交錯して上値は重くもみあいながらも目立った下落局面はなく結局、4日続伸。129.04円高の9153.20円で引けて、2ヵ月ぶりに9100円台を回復した。東証1部売買代金は1兆2168億円と、値動きと同様、前週末と比べてやや落ち着いた。値上がり銘柄は1355もあり、幅広く買われている。
セクター別では日立 <6501> など電機、野村HD <8604> など証券、電力、鉄鋼の他、JT <2914> などディフェンシブ系の食品株も今日は買われたが、前週末非常に好調だった建設の一部に後場、売られるものが出た。アイフル <8515> は59円高で東証1部売買代金1位になった。
20日は「財政の崖」問題の進展によるNYダウの207.65ドル高、大幅続伸の後を受けながら、為替は前日とあまり変化がなく、インテルCEOの退任報道がシャープ <6753> の株価にどう影響するかなど、不安も抱えながらの東京市場開始となった。しかし日経平均の始値は45.22円高の9198.42円で、一時は9200円台にもタッチした。前場はほぼプラス圏で推移したが、昼休みに日銀が金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定したと発表。市場の予想通りで売り買いの材料にはならず、後場は高値警戒感による様子見ムードが加わって後場の午後1時30分過ぎにマイナス圏に突入し、前日終値近辺で一進一退。終値は10.56円安の9142.64円と、日経平均の続伸は4日でストップした。売買代金は1兆円以上の水準を維持している。
上昇したのはソフトバンク <9984> 、NTT <9432> など情報・通信、商船三井 <9104> など海運、保険など13業種。クレディスイス証券が投資判断を引き上げた日本板硝子 <5202> が東証1部の値上がり率ランキング2位に入ったのが目立った。下落したのはパナソニック <6752> など電機、不動産、証券など20業種で、アイフル <8515> が5日ぶりに下げ、トヨタ <7203> 、日産 <7201> 、ホンダ <7267> など自動車、関西電力 <9503> 、中部電力 <9502> など電力には利益確定売りも出た。シャープ <6753> は3円安だった。
21日は、前日のNYダウがヒューレット・パッカード(HP)の赤字と子会社の不正会計問題発覚、「財政の崖を回避できなければ景気後退に陥りかねない」というバーナンキFRB議長発言が投資家心理を冷やし7.45ドル安だったこと、ムーディーズがパナソニック <6752> の格付けを投資適格ギリギリの水準まで下げたこと、10月の貿易統計が予想を超える5490億円の大赤字だったことなどで、東京市場には続落懸念もあった。しかし日経平均の始値は71.09円高で9200円台に乗せて始まり、前場はそれを維持した。後場に入ってユーロ圏財務省会合でギリシャ追加支援の結論が26日以降に持ち越しになったニュースを受けてユーロとともに株価も一時下落し、9200円台をたびたび割り込みながら、終盤は買い戻しが入って終値は79.88円高の9222.52円だった。地合いの良さに加え、フランス国債の格下げをしのいでユーロ円が一時105円直前、ドル円が一時82円直前の水準まで進んだ円安も好感された。東証1部売買代金は1兆1101億円。日経平均先物あたりに海外の機関投資家のまとまった資金が入る流れは依然、続いている。
東証1部売買高ランキングトップになったマツダ <7261> が7円高、トヨタ <7203> が75円高、ホンダ <7267> が 82円高など自動車株が売買を伴って上昇し、日野自動車 <7205> と富士重工 <7270> は年初来高値を更新した。輸出関連株を中心に電機、機械、ゴム、鉄鋼、化学、海運なども買われた。ハイテク株のキヤノン <7751> 、東京エレクトロン <8035> 、ファナック <6954> も好調。ソフトバンク <9984> は4日続伸して3000円台に乗せた。一方、前週末好調だった東京建物 <8804> など不動産が下落し、保険株も売られている。アイフル <8515> は利益確定売りで続落した。
23日が勤労感謝の日で休日なので今週は22日まで。週の最終日は利益確定売りが多く出て、特に連休前はそれが目立つ傾向があるが、この日は、そんなことはどこかに置き忘れたかのような好調ぶりだった。日経平均は5月2日以来の9300円台に乗せてスタート。為替は円安がさらに進行し、前日夕方に82円台に乗せたドル円が82円台半ば、ユーロ円が105円台後半で一時106円台にタッチした。前場途中に発表されたHSBCの中国製造業PMI(購買担当者指数)が50.4で再び50を超え、中国の景気減速の底入れ期待に応えるデータが出た。東京市場も大引けまで9300円台を保ち続け、最後は高値引け、144.28円高の9366.80円で今週の取引を終えている。ヘッジファンドとみられる海外の機関投資家がリスクオンして、債券先物(円)を売って株価指数先物を買う動きはこの日も旺盛。東証1部売買代金は1兆1818億円で、6日連続で1兆円以上をキープした。
東証33業種中26業種がプラスで、上がったのは証券、鉄鋼、非鉄金属、輸送用機器、海運、機械、精密、ガラス・土石など、円安メリットを受ける輸出関連株が多い。野村HD <8604> が7日続伸で、大和証券グループ本社 <8601> が年初来高値更新。マネックスグループ <8698> 、松井証券 <8628> などネット証券も含めて証券株は全般に売買を伴って上昇した。ソフトバンク <9984> は5日連騰して売買代金トップになり、アイフル <8515> は14円高と反発し、シャープ <6753> も7円高だった。下げた業種は関西電力 <9503> など電力・ガスや小売、石油・石炭、空運など、どちらかと言えば「ディフェンシブ系」。家電量販店のケーズHD <8282> はヤマダ電機 <9831> から訴えられ大きく下落し、ヤマダ電機も下げた。
自動車株はトヨタ <7203> 、日産 <7201> 、ホンダ <7267> が揃って好調に値を上げ、前週末金曜日の終値と比較するとトヨタは3325円→3515円で5.7%上昇、日産は738円→788円で6.7%上昇、ホンダは2591円→2750円で6.1%上昇している。前週は建設、不動産、金融の週だったが、今週は部品メーカーやゴムなど関連産業も含めて「自動車の週」と言えた。
来週の展望 ブラックフライデーの結果は影響するか?
野田首相の解散・総選挙発言直前の14日終値から22日終値まで、衆議院解散をはさんで日経平均は6日間で8.1%も上昇した。22日の大引け後、日経平均先物は大証の夜間取引で9400円台に突入し、勢いは止まらない。建設、不動産、金融が一息ついても次は自動車が好調というようにセクターは「週替わりヒーロー」状態。それまでが悪すぎたためか「高所恐怖症」にはならず、ヨーロッパ発のサプライズで崩れることもなく、NY市場やアジア市場が下落しても東京市場だけは独歩高。為替の円安と歩調を合わせたこの上げ相場は、いったいどこまで続くのか?
来週、まず気になるのがアメリカのクリスマス商戦の幕開けを告げる23日の「ブラックフライデー」と26日の「サイバーマンデー」の結果である。ブラックフライデーの売上のショッピングセンターなどリアル店舗の速報値は「ショッパートラック」社が24日に発表し、ネット店舗の速報値は「コムストア」社が25日に発表する。昨年はリアル店舗が6.6%増、ネット店舗は26%増で共に過去最高の伸び率を記録したため、今年はその反動で伸び率が前年を大きく下回ったり、下手するとマイナスの数字になる可能性もある。どちらにしても「去年が良すぎたから」と注釈がついても悪化は悪化で、それが週明けにNY市場よりも先に開く東京市場で「アメリカの個人消費が冷えた」と解釈されると、26日は安く始まることも考えられる。サイバーマンデーの結果も去年は非常に良かったので、同じことが言える。
25日はスペインからの分離・独立が争点のカタルーニャ自治州の議会選挙があり、26日にユーロ圏の財務相会合でギリシャの追加支援問題が話し合われる。27日にはイタリアとスペインで国債の入札がある。ユーロ安につながるマイナス要素が出ると東京市場でも下落要因になるだろう。
アメリカでは27日にS&P/ケースシラー住宅価格指数、28日に新築住宅販売件数のデータが出るが、QE3効果で好調が続いているのでそれを確認するにとどまる。オバマ政権が続くので27日のバーナンキFRB議長の講演も、28日に出る地区連銀の経済報告書「ベージュブック」も影響は限定的だろう。むしろ「財政の崖」問題で変なことを言い出して、大統領と議会の微妙な駆け引きをかき回すような政治家なり要人なりが現れるほうが怖い。
月末30日の東京市場は、国内の重要な経済統計の消費者物価指数、家計調査、完全失業率、有効求人倍率、鉱工業生産指数が午前9時前に、住宅着工戸数が午後2時に発表されること、利益確定売りが多くなる金曜日でありながら、「ドレッシング買い(お化粧買い)」の買い出動があるとされる月末日でもあることから、株価がどんな値動きをするか最も注目される日になる。
海外からの資金流入が続いていて地合いはいいので、来週、ドル円が80円、ユーロ円が100円を割り込むような大幅な円高に振れない限り、9000円の大台を割り込むような事態はまず起こらないだろう。(編集担当:寺尾淳)