日本の自動車関連産業のグローバル化が加速している。日本では若者の車離れが進んでいるといわれているが、全体で見れば自動車産業は今でも、我が国の経済をけん引するフロントランナーであることに変わりはない。日本の主要製造品出荷額約290兆円のうち、18%にあたる約52兆円を占め、就業人口6311万人の8.7%にあたる550万人が自動車関連産業に就業している。自動車産業の未来が、日本の豊かさを左右するといっても過言ではないだろう。確かに、この20年ほどの間に自動車の国内生産は371万台減、国内販売は234万台減と下降の一途を辿っている。しかしその一方で、同じ20年間のあいだに、海外生産は1420万台の増加となっているのだ。これが、自動車関連企業がグローバル化を推し進める大きな理由の一つだ
例えば、日産自動車は、インドでダットサンを生産しているが、100以上の現地サプライヤーから部品を調達したり、現地での設計、開発、生産に取り組んでおり、順調な成果をあげている。インド市場参入3年目の2016年4月には3車種目の商品となる、インド初のアーバンクロス「redi-GO」を公開し、クラス最高レベルの機能を提供している。低価格車を中心にしたラインナップは、インドだけでなく、インドネシアや南アフリカ、ロシアの若者層からの人気を集めているようだ。
トヨタ自動車も中国において年々高まりつつある、持続可能性への関心の高まりや、排ガス規制の強化などに対応する製品開発のために、現地に新しいR&D施設を開設するなど、中国市場での地盤を強固にするための柔軟な施策を展開している。
2010年に「中国のためのクルマづくり」に向け、開発体制の現地化と強化を目的に設立されたTMECでは、設立時の投資計画に基づいた既存実験棟の増強、新実験棟の建設、電池評価試験棟の新設およびテストコースの増強を実施することを公表しており、2018年末以降の完成を予定している。
自動車メーカーだけでなく、自動車部品メーカーにもグローバル化の波は押し寄せている。
自動車用防振ゴム・ホース部門で国内トップシェアを誇る住友理工もいち早くグローバル展開を進めている企業の一つで、今年に入ってからもドイツ・フランクフルトに新たに営業本部を設置するなど、海外での拡販活動の幅を積極的に広げている。
これまで同社の営業展開は名古屋・グローバル本社内に置かれた「グローバル自動車営業本部」で行われていたが、2月より「第1グローバル自動車営業部」が日系カーメーカーを担当することとし、フランクフルトに新設する「第2グローバル自動車営業本部」が海外カーメーカーへの拡販を担当する。同社は「第2グローバル自動車営業本部」を基点として、日付が変わらずに連絡が取れる米国や中国、インドへの営業活動を考えており、2本部制を導入することによって、日本、米州、欧州、中国、アジア・インドの世界5極を拠点に、全世界での拡販活動を加速させることが狙いだ。
現在のところ、日本の自動車関連企業のグローバル展開は順調に進んでいるといえよう。しかしながら、韓国企業などでもグローバル化は始まっており、楽観視はできない。実際、中東やASEAN市場での日本企業のシェアは獲得しているものの、その他の地域では欧米や韓国メーカーの先行を許している新興市場も多い。そういった地域に対してどれだけ巻き返しを図れるかが、今後の日本の自動車産業の大きな岐路となりそうだ。(編集担当:藤原伊織)