ボリンジャーバンドでは、前々週末の3日は25日移動平均-2σと-1σの間にあったが、前週末10日は25日移動平均+1σの19317円と+2σの19526円の間にあり、週間騰落+460円により「ニュートラル・ゾーン」を飛び越えて上に大きく移動した。10日終値と+1σとの距離は61円で、+2σは148円上、+3σの19734円は356円上にある。下に動きやすく、上への動きは限定される位置だが、それほど強い縛りではない。
オシレーター系指標は、週間騰落+460円でも不思議なことに「売られすぎ」のシグナルが1個点灯している。これは終値が18918円だった3日と同じ。売られすぎは-57.3で売られすぎ基準の-50を下回ったRCI(順位相関指数)。前々週末は売られすぎだったストキャスティクス(9日・Fast/%D)は47.3でほぼニュートラル。その他の指標は、ボリュームレシオは58.9、サイコロジカルラインは7勝5敗で58.3%で、この2本は前々週末から数値がほとんど動いていない。25日騰落レシオは100に届かず93.2、25日移動平均乖離率は+1.4%でプラスに戻った。RSI(相対力指数)は60.4だった。
2月3日時点の需給データは、信用買い残は1月27日時点から1271億円増の2兆3428億円で5週連続の増加。信用倍率(貸借倍率)は2.39倍から2.61倍に増加し2週ぶりの増加。信用評価損益率は-7.20から-7.81へ2週ぶりの悪化。裁定買い残は23億円増加の1兆6493億円で2週ぶりに増加した。1月30日~2月3日の投資主体別株式売買動向は、外国人は2448億円の3週連続の売り越し、個人は2041億円の2週ぶりの買い越し、信託銀行は595億円の2週ぶりの売り越し。「日本の個人投資家は逆張り主義」と言われるように、週間騰落549円安の週なので個人は大きく買い越していた。
前週5日間のカラ売り比率は、6日が39.3%、7日が39.8%、8日が38.7%、9日が38.5%、10日が35.0%。前々週は上昇した日は40%割れ、下落した日は40%超えというわかりやすさだったが、前週は9日まで38.5~39.8%で、40%を少し下回る水準で小幅に動いただけ。しかし10日はSQを通過した上に471円高とリスクオンしたため大きく低下した。日経平均VI(ボラティリティー・インデックス)の10日終値は18.53で、3日終値の20.68から2.15ポイント下落した。9日の17.89まで下がり続け、前週は見かけほどはリスクオフしていなかった。
10日、ホワイトハウスで日米首脳会談が約1時間40分間行われ、トランプ大統領は経済では貿易赤字や円安に言及せず、通商や為替の問題は今後、麻生副総理とペンス副大統領の包括協議で話し合うとした。共同記者会見で大統領は「両国に恩恵をもたらす貿易関係を求めていく」と期待を示し、友好的なムードが漂っていた。「通商問題で話がこじれ大統領がぶりぶり怒りだすのではないか」など、息をひそめて悪い想像ばかりしていたマーケットに、温かい「春一番」は吹くだろうか? トランプ大統領は会見後、安倍首相夫妻を大統領専用機「エアフォース・ワン」に同乗させてフロリダ州の別荘に招き、ゴルフや食事などで週末を一緒に過ごした。
前週末10日のヨーロッパ市場は揃って上昇。「トランプ減税好感」の流れが続き、NYダウは96ドル高と続伸して20200ドル台に乗せ、ともにプラスだったNASDAQ、S&P500とともに史上最高値を更新した。ミシガン大学消費者態度指数速報値は95.7で1月確報値から2.8ポイント低下し市場予測を下回った。財政収支の黒字は前年同月比-7.1%だが、現会計年度が始まった10月以来4ヵ月間の累計赤字は前年同期比-2.2%と健全化の方向。輸入物価指数はエネルギー価格の上昇で前月比+0.4%、前年同期比+3.7%で4年11ヵ月ぶりの高水準。輸出物価指数は前月比+0.1%、前年同月比+2.3%。NY時間の為替レートはドル円が113円台前半、ユーロ円が120円台半ば。大阪夜間取引終値は19350円。CME先物清算値は19340円だった。
日米首脳会談が終わり、マーケットに様子見をさせる懸念材料が一つ消えた。「イベントは、それを通過すること自体が好材料」で、SQ明けでもある今週は上値追いのチャンス。日米の決算発表シーズンはヤマを越え、経済指標やイベントも、騒がれそうなのは利上げに関する「コメントの英文解釈」が異常なまでに神経過敏になるイエレンFRB議長の議会証言ぐらい。テクニカル指標は、ボリンジャーバンドなどトレンド系はやや高めだがオシレーター系には「売られすぎ」はあっても「買われすぎ」がない。GDPの下振れや東芝の問題など国内にもリスク要因はあるが、為替のドル円が113円台から114円台に向かうような円安の流れが続けば、日経平均は19400円台、19500円台に乗せ、25日+2σの19526円を抜いて19600円タッチもあるとみる。「春一番」と言っても、上昇のペースがワルノリ交じりの強風ではなく1日の上昇幅が100円前後なら、好ましい。お天気でも春一番の翌日は「寒の戻り」がきつくなる。
一方、下値のメドは、今週はずっと固定される19112円の雲の上限とみる。前週は9日まで雲の上限がレジスタンスライン(上値抵抗線)の闘士と化して上への突破を阻んだが、10日の始値で突破してしまったから、敵を兄弟に変えるやさしい法則で今週はサポートライン(下値支持線)の援軍に変わるはず。雲の向こう側はいつも青空だ。雲の上限19112円のわずか3円下の19109円(10日時点)には、座りのいい25日移動平均線もある。これも押し目買いが入る反発点になりやすく、下に抜けにくい防衛ラインだ。
ということで、今週の日経平均終値の予想変動レンジは19100~19600円とみる。
トランプ政権が発足してから、まだ20日余りしかたっていないが、いろいろなことがありすぎて、100日ぐらい経過したような錯覚さえ覚える。その間に世界のマーケットに起きた波乱のかなりの部分は「よくわからないから、あれやこれやと悪いシナリオばかり想像しては、怖がる」ことで起きている。つまり、想像力によって想像上の「トランプ政権の虚像」が浮上し、それが一人歩きしてしている。世界のマーケットをむやみに動揺させ、萎縮させ、混乱させているこの「想像力の肥大化」がおさまって落ち着くまで、少なくとも100日ぐらい、必要なのだろうか?(編集担当:寺尾淳)