今後の「日本の舵取り役」を決める「大事な国政選挙・衆議院選挙」が12月4日公示、16日投開票で実施される。衆議院の解散・総選挙を決めた野田佳彦総理は「近いうちの約束を果たす解散だ」と16日夕の記者会見で語った。
民主党にとって「集団自殺行為だ」とささやかれ、党内が解散反対方針の中での総理の決断。
「政治は筋を通さなければならない。そのことによって、国民の政治への信頼を回復することができる」と自らにも、党の仲間たちにも、この荒れる海に船を漕ぎ出し、再び、政権党として島に辿りつくよう、試練を越えねばならないのだと言い聞かせるかのような響きが言葉の中にあった。
3年間の民主政権の審判を、野田政権としての自らの采配を、国民がどう判断し、審判を下すのか。その審判を経なければ新年度予算も、福島をはじめとした震災復興も、原発事故収束対策も、さらにはデフレ脱却、大きく横たわる普天間移設問題や尖閣・竹島・北方4島の外交政策も、すべて「説得力のない政府」でしかなくなってしまう。
野田政権にとっては「背水の陣」であると同時に、引き続き政権をゆだねられれば「分厚い中間層づくり」と「脱原発依存社会の実現」「政治改革」が推進しやすくなる。
今回の選挙は第3極云々ではなく、「政権続投をめざす民主」対「政権奪還をめざす自民」の選挙であることに変化はない。第3極はその流れに石を投げ込むのかもしれない。しかし、三つ巴になるとは思えない。
TTP交渉参加や消費税増税に反対する信念から民主を去った議員は多いが、野田政権は公債特例法案を政局の具にしない、衆議院議員小選挙区での一票の格差の是正、自ら身を切る議員定数削減への道筋をつけた。定数削減実現までは国会議員の歳費と期末手当を2割削減する措置を決めた、など一定の成果を土産に解散に踏み切った。民主にとってのダメージを軽減しただろう。
単独過半数は無理と判断したのだろう。「比較第1党」(輿石東幹事長)になることを目標にした。
それでも、民主対自民の戦いだ。その意識は野田総理の会見でも色濃く出た。第3極でも、公明でも、共産や社民でもなく、野田総理が野田政権として、民主代表として訴えた5つの分野(社会保障、経済政策、エネルギー政策、外交・安全保障政策、政治改革)全ての比較は自民との比較だった。その他の党の政策との比較は全く口をつかなかった。
総理は言った。「自民党の国土強靭化計画は積算根拠もなく、総額ありきで、従来のように公共事業のばら撒きで日本が再生するとは思わない」と。原発政策では「大きな方向性は10年かけて決めるという自民党。われわれは原発に依存しない社会をつくる」。外交政策「強い言葉で外交安全保障を語る風潮が強まってきたように思う。極論の先には真の解決策はない。我々は大局観をもって、冷静に現実的な外交安全保障政策を推進してきたし、今後もその姿勢を堅持していきたい」。
極めつけは「脱世襲政治を実現するために、わたしたちは政治改革の先頭に立っていく」。
解散直後にこれだけの政権アピールができるのは政権与党の党首であるからだが、野田総理の眼前にある選挙相手の顔は「自民党」「自民党」なのだ。
総理は会見の最後に言った。「これから1ヶ月間、これら5つの分野で議論を大いにやって、国民のみなさまの正当なる審判を得たい」。(編集担当:森高龍二)