【今週の振り返り】トランプ演説が「まとも」で185円上昇した週

2017年03月04日 20:35

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2月28日のトランプ大統領の議会演説は、「インフラ投資1兆ドル」がハイライト。「驚くべき減税」の具体策がなくとも、株価を押し上げるには十分な「実弾」。

 日経平均終値は274.55円高の19393.54円、TOPIX終値は+17.77の1553.09。売買高は19億株、売買代金は2兆3890億円。値上がり銘柄数は1426、値下がり銘柄数は456。プラス32業種の全面高で、上位は機械、保険、証券、電気機器、化学工業、輸送用機器など。マイナスはパルプ・紙1業種のみ。上海総合指数は0.16%高だった。

 3月2日の日経平均は大幅に3日続伸。ユーロ圏経済の大黒柱、ドイツのCPI速報値は+2.2%で4年半ぶりの高水準でECBが目標とする+2%を上回った。ドイツの失業率は5.9%で市場予測と同じ。ドイツのPMIは6年ぶりの高水準。トランプ演説の好影響もありヨーロッパ市場は全面的に大幅高。NYダウは303ドル高で21000ドルを突破。NASDAQもS&P500も大きく上昇した。

 トランプ大統領の議会演説で「驚くべき税制改革」の具体的な数字は出なかったが、「インフラ投資1兆ドル」は景気づけに十分で、「合法的な移民は良き納税者になれる」と述べるなどソフトな変化も加わって、いつもは辛口のメディアも一定の評価をしていた。「過激なことを言わず無難に終わった」とマーケットも好感し、さらにNY連銀のダドリー総裁らの発言で3月利上げ観測が高まった。イベントは通過することそれ自体も好材料で、一気にリスクオンの春。金融セクターが買われ、議会演説でソフトバンクGとともに社名が挙がったフォード、GMは上昇、インテル、ウォルマートは下落。ベストバイの決算は減収増益でEPSは市場予測を上回った。

 FRBから発表されたベージュブック(地区連銀経済報告)は、雇用、賃金が良好でアメリカ経済は「緩やかに拡大」という評価。注目のISM製造業景況感指数は57.7、+1.7ポイントで市場予測を上回り、2年半ぶりの高水準。6ヵ月連続で50超え。建設支出は前月比-1.0%でプラスの市場予測を裏切った。公共部門が-5.0%で2002年3月以来の大幅減なのは政権交代の影響もあり。個人所得は+0.4%、個人消費支出(PCE)は+0.2%で伸び低下、個人消費支出物価指数は+1.9%。新車販売台数は1%減で、ビッグスリーはGMだけプラス。日本勢は日産、ホンダはプラス、トヨタはマイナスだった。

 原油先物価格は小幅安で53ドル台。金先物価格は続落。アメリカ長期金利の上昇でドル円が一時9営業日ぶりの114円台に乗せた為替レートは、朝方は113円台後半。ユーロ円は121円近辺。大阪夜間取引終値は19590円。CME先物終値は19565円だった。

 日経平均始値は231円高の19624円。高値は9時16分の19668円。安値は終値で「安値引け」。終値は171円高の19564円。取引開始前に日銀から発表された2月末のマネタリーベース(資金供給量)は前月比1兆8330億円減少。2月の平均残高は前月比21.4%減で6ヵ月ぶりの減少だった。2月は日数が少ない上に「ニッパチ」で踊り場の月。

 FRBのブレイナード理事が「追加利上げが早期に行われることが必要」と発言して為替のドル円は114円台に再び乗せ、日経平均は19400円も、「奴らを通すな!」と屈強なレジスタンスラインの闘士であり続けた19500円も、19600円も一気にワープ。チャート上では宮殿のような大マドを開けて19624円で始まり、1月5日のザラ場ベースの昨年来高値19615円を上回る。序盤はさらに19600円台後半まで高値追い。最初の20分で上昇エネルギーを大放出した後は19600円台前半で巡航。電池が切れたのか10時台に19600円を割る場面もあったが、すかさず買い支えが入って19600円台に戻される。ドル円は114円をはさんだ値動き。日経平均は19600円台半ばまで上昇して、前引け。

 後場はプラス幅を圧縮し、19600円を少し超える水準で再開するが、1時台以降は19500円台後半に下がって横ばいの動き。ドル円は114円をはさんだ変動がなお延々と続く。19600円に届かないまま変化に乏しい後場は安値引け。大幅高で3日続伸だが、高値追いのエネルギーが最後まで続かず、終値ベースの昨年来高値(大発会の1月4日の19594.16円)を更新できなかった。TOPIXのほうは終値ベースの昨年来高値を更新。

 「残業1割減」が日経新聞朝刊1面を飾ったヤマトHD<9064>は2.25%高。ロボットにはまだ宅配便の戸別配達は難しいという。シャープ<6753>の再建スポンサー、鴻海(ホンハイ)が半導体事業の買収を「真剣に考えている」とコメントした東芝<6502>は2.70%高。動画再生に適した大容量NAND型フラッシュメモリーの将来は非常に有望だが、その「カネのなる木」を手放さないと生き残れない東芝は、断腸の思いだろう。

 日経平均終値は171.26円高の19564.80円、TOPIX終値は+11.60の1564.69。売買高は22億株、売買代金は2兆5328億円。値上がり銘柄数は1457、値下がり銘柄数は421。プラスは29業種で、その上位は非鉄金属、証券、ガラス・土石、保険、その他金融、金属製品など。鉱業1業種がプラスマイナスゼロ。マイナスはその他製品、パルプ・紙、サービスの3業種。上海総合指数は0.52%安だった。

 3月3日の日経平均は4日ぶりの反落。ユーロ圏の2月の消費者物価指数(CPI)は+2.0%で4年1ヵ月ぶりの高水準だが、コア指数は+0.9%と低い。それでも来週9日のECB理事会でフランスの大統領選挙を待たずに国債の買入額を減らすのではないかという「テーパリング懸念」が出て英国、ドイツは株価下落。フランスもごく小幅高とさえない。

 NYダウは112ドル安で21000ドル台をかろうじて維持。NASDAQ、S&P500も含め3指数とも反落した。大幅高後の一服にしては終盤に下げ幅を3ケタまで拡大した要因は、3日続落で52ドル台に低下した原油先物価格と、前日に1兆ドルのインフラ投資関連の資本財セクターともてはやされたキャタピラーに政府当局の立ち入り検査が入ったこと。金先物も3日続落した。「スナップチャット」のスナップがNY市場に新規上場。SNS関連のIPOとして話題が先行したが、初値は公開価格を41%上回り上々のデビュー。時価総額240億ドルの大型上場になった。