【今週の振り返り】大統領の「爆走」に翻弄され549円下落した週

2017年02月04日 20:26

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政権の引き継ぎもそこそこに、猛烈なスタートダッシュをかけるトランプ大統領。中央銀行イベントも経済指標も企業決算も脇役に追いやられ、マーケットは右往左往。

 1月30日の日経平均は4営業日ぶりに反落。前週末27日のNYダウは7.13ドル安で4日ぶりに反落したが2万ドル台は堅持。NASDAQはプラス、S&P500はマイナス。原油先物価格は終値53ドル台だが小幅下落してエネルギーセクターが下げた。金先物価格は4日続落でリスクオン継続中。ヨーロッパ市場は、メイ首相が訪米してトランプ氏が大統領として初の首脳会談を行った英国はプラス、ドイツ、フランスはマイナスだった。トランプ大統領はメキシコのペニャニエト大統領と電話会談し、スポークスマンは「うまくいった」と言いメキシコの通貨ペソは上昇したが「やっぱりね。電話じゃ物足りない」かもしれない。

 アメリカの経済指標。12月の耐久財受注額は全体では-0.4%だがコア資本財は+0.8%で市場予測よりも上。1月のミシガン大学消費者態度指数確報値は98.5で、速報値から0.4ポイント上方修正されて市場予測を上回り、13年ぶりの高水準。しかし10~12月期のGDP速報値は+1.9%で7~9月期の+3.5%から悪化。市場予測の+2.2%も下回った。アメリカの企業決算。前日発表のマイクロソフト、インテルは上昇。アルファベットは下落。スターバックスは2017年の売上高見通しを下方修正。アメリカン航空は大幅減益。シェブロンの決算は黒字化したがEPSは市場予測を下回った。アメリカの長期金利は低下したが、NY時間の為替レートはドル円が115円台前半、ユーロ円が123円台前半で円安進行。大阪夜間終値は19430円。CME先物清算値は19470円。30日朝方の為替レートはドル円が114円台後半、ユーロ円が122円台後半で、円高方向に少し戻っていた。

 日経平均始値は96円安の19371円。高値は9時14分の19390円。安値は10時40分の19295円。終値は98円安の19368円。トランプ大統領は週末、日本の安倍首相、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領ら主要国の首脳と相次いで電話会談を行った。オーストラリアのターンブル首相とは口げんか。かつてブッシュ(父)大統領から各国首脳への直接電話は「ブッシュホン」と呼ばれたが、「トランプホン」の効果はいかに? 大統領令で指定した7ヵ国からの入国拒否が相次ぎアメリカの国際空港が大騒ぎになる一方で、カナダのトルドー首相はひろく難民を受け入れると表明した。30日の取引開始前に12月の商業動態統計速報値が発表された。小売業販売額は前年同月比+0.6%、前月比-1.7%。全店ベースで百貨店・スーパー合計は-1.2%、コンビニは+3.7%だった。国内の個人消費は年末商戦でも盛り上がらなかった。2016年通年では-0.6%で2年連続のマイナス。

 日銀の金融政策決定会合第1日の日経平均は序盤、大幅安で開始。TOPIXもマイナス。19400円に届かないままどんどん安値を更新し、10時30分すぎには19300円を割り込む。直接の要因は朝方のドル高円安進行だが、その背景にはアメリカのGDPの不振、トランプ大統領の保護主義的な経済政策への懸念があり、空港での騒ぎも人材面の機会損失で経済成長にマイナスという意味では決して無関係ではない。11時台は19300円台前半で推移し、そのまま前引け。日経平均は3ケタ安、TOPIXは2ケタ安で、日銀のETF買いが入る条件を十分に満たした。

 為替のドル円は114円台前半まで円高が進行。後場の日経平均は下げ幅を拡大しても19300円台を維持して再開。カナダのケベック市のモスクで乱射事件が起きて死者も出て、難民受け入れを表明したケベック州育ちで同州が選挙区のトルドー首相に痛烈な打撃。しかし東京市場への影響は軽微で1時台には3ケタ安でも19350円を超える。為替のドル円も114円台後半まで円安に振れた。

 12月の自動車各社の生産・販売実績が発表され、トヨタ<7203>は国内生産-6.6%、国内販売+10.1%、海外生産-0.8%。2016年の世界販売はグループ合計1009.1万台で0.2%の増加だったが、燃費がらみの不祥事による落ち込みから3.8%増と巻き返したフォルクスワーゲンに抜かれ第2位だった。VWは初の世界首位。日産<7201>は12月の国内生産+31.5%、国内販売+11.7%、海外生産+7.1%。ホンダ<7267>は12月の国内生産+11.6%、国内販売+11.7%、海外生産+7.1%。2時台の日経平均は日銀会合やFOMC前の様子見、上海、香港市場の春節休暇の薄商いの中、日銀買い703億円の効果も現れたようでマイナス圏でも19350円をはさむ安定した小動き。TOPIXは高値圏。そのまま大引けになり3ケタ安を回避した。トヨタの株価は終盤プラスに滑り込み0.01%高、日産は0.44%安、ホンダは0.03%高だった。

 前週27日に東証マザーズに新規上場し初値がつかなかったシャノン<3976>に初値がつき、公開価格1500円の4.20倍の6310円の初値がつき会心の白星。1月はこの1件のみ。次の新規IPOは来週2月10日の安江工務店<1439>。

 日経平均終値は98.55円安の19368.85円、TOPIX終値は-5.48の1543.77。売買高は15億株、売買代金は1兆9240億円で1月16日以来の薄商い。値上がり銘柄数は848、値下がり銘柄数は1003。プラスは10業種で、その上位は石油・石炭、鉄鋼、水産・農林、その他金融、ゴム製品、海運など。マイナスは23業種で、その下位は保険、電気・ガス、銀行、機械、不動産、繊維など。上海市場は春節(旧正月)休暇で休場。

 31日の日経平均は大幅続落。ドイツのCPI速報値は+1.9%で3年半ぶりの高い伸び。ユーロ圏景況感指数は108.2で6年ぶりの高水準。「PIIGS」の言葉もなつかしいイタリア、スペインの上昇が大きかった。しかし週明けのヨーロッパ市場は揃って下落。理由はアメリカの国際空港で混乱を招いた中東・アフリカ7ヵ国からの移民や難民に制限をかける大統領令で、NYダウも2万ドルをあっさり割り込み終値は122ドル安で続落した。航空会社や旅行関連の銘柄が下落。大統領に「デルタのシステムトラブルのせいだ」と名指しされたデルタ航空は4.08%安。航空燃料需要の先行き不安で原油先物価格も終値52ドル台に下がった。サインした本人は「問題ない」と言いながらヨーロッパの首脳も、アメリカの企業トップも、オバマ前大統領も批判する大統領令のおかげでトランプ・リスクが顕在化し、金先物価格は5営業日ぶりに反発した。

 アメリカの経済指標は悪くなかった。12月の個人所得は前月比+0.3%で市場予測より下だったが、アメリカのGDPの約7割を占める個人消費支出は前月比+0.5%で市場予測と一致し、2009年以降で最高値。PCEコア・デフレータ(価格指数)は前年比+1.7%。12月の仮契約住宅販売指数は+1.6%で市場予測を上回った。テキサス州を中心にシェールオイル/ガスが息を吹き返しダラス連銀製造業景気指数は+22.1と好調。アメリカの長期金利は上昇したが為替レートはドル円が113円台後半、ユーロ円が121円台後半でドル安円高進行。大阪夜間取引終値は19110円。CME先物終値は19175円。

 日経平均始値は223円安の19145円。高値は10時12分の19199円。安値は終値で「安値引け」。終値は327円安の19041円。1月の月末日で、取引開始前に政府発表の経済指標がまとめて発表された。12月の家計調査の二人以上世帯の実質消費支出は-0.3%で10ヵ月連続マイナスだが市場予測よりは良かった。ボーナス月で勤労者世帯の世帯あたり消費支出は+2.2%で8ヵ月ぶりのプラス。12月の有効求人倍率は前月比で0.02ポイント上昇し1.43倍。4ヵ月連続で上昇し市場予想を上回った。全都道府県で1倍を超え1991年7月以来25年5ヵ月ぶりの高水準。新規求人倍率は0.07ポイント上昇し2.18倍。正社員の有効求人倍率は0.02ポイント上昇し0.92倍だが、依然として1倍割れ。2016年平均の有効求人倍率は前年比で0.16ポイント上昇し1.36倍。7年連続で上昇し1991年の1.40倍以来25年ぶりの高水準。新規求人倍率は2.04倍だった。12月の完全失業率は3.1%で、11月、市場予測の数字と同じだった。完全失業者は4万人増加。2016年の平均は前年から0.3ポイント低下し3.1%だった。完全失業率は3%をなかなか切れない下方硬直性がある。12月の鉱工業生産指数速報値は市場予測を上回る+0.5%の100.4で2ヵ月連続プラス。自動車など輸送機械工業が良かった。出荷指数は-0.3%、在庫指数は+0.2%、在庫率指数は+0.9%。生産の基調判断は「持ち直しの動き」で据え置き。1月の製造工業生産予測指数は+3.0%だった。

 日経平均は200円を超える大幅安で始まるが序盤は19100円台をかろうじて維持する。9時台は大半の時間は19100円台半ばだったが、10時台になると19200円にあと25銭まで接近する。為替のドル円は113円台後半で動きがない。日銀会合は大方の見方は「何もなし」だが、それでも様子見し19100円台後半から半ば、前半へ徐々に下げていく。19100円台はなんとか保って前引け。大幅安なので日銀のETF買いの条件を満たす。昼休み中に発表された日銀の金融政策決定会合の結果は予想通り「金融政策現状維持」。貸出支援基金を1年延長し、経済成長見通しを2017年度は+1.5%、2018年度は+1.1%に上方修正したが、2016年度の物価見通しを下方修正。ドル円はしばらく乱高下した。