日・米・欧の遺伝子治療薬の市場規模は2020年には738億円に急拡大

2017年03月06日 07:55

 2012年10月に先進国で最初の遺伝子治療薬となる「Glybera」が欧州で販売承認された。これを皮切りに「IMLYGIC」、「Strimvelis」、「Zalmoxis」の販売が欧米で承認され、遺伝子治療薬の市場が芽生えつつある。これを受け、シード・プランニング(は、遺伝子治療薬の将来展望に関する調査を行い、その調査結果を取りまとめた。

 2017年にはCAR-T療法製品が米国で販売承認される見通しであり、これを契機に遺伝子治療薬市場が大きく成長することが予想されるという。遺伝子治療薬の研究開発状況をみると、癌や単一遺伝子疾患、眼疾患、神経疾患、感染症、慢性疾患など様々な疾患を対象に、2015年から2016年の期間に世界で556件の臨床試験が実施された。種類別に分類すると、CAR-T療法やDNA/RNAワクチンの臨床試験が多いが、腫瘍溶解性ウイルスやTCR療法の臨床開発も活発化し始めている。さらに、ゲノム編集を基本コンセプトとした遺伝子治療薬の臨床試験が始まるなど、遺伝子治療薬の研究開発は活況を呈している。

 日本においても条件及び期限付承認制度が追い風となって、遺伝子治療薬の市販を目指した研究開発が著しく増加しており、2018年頃から遺伝子治療薬市場が形成されると見込まれるとしている。

 調査は、医薬・医療業界の成長分野として注目される遺伝子治療薬について、世界の研究開発動向と、メインプレイヤー企業の事業戦略をフォローするとともに、医療現場における実用化・普及に向けた課題を検討し、遺伝子治療薬市場の将来を展望した。

 日・米・欧3 地域における遺伝子治療薬の市場規模は2016 年時点で24 億円程度(推定)と小さい。 しかし、2017 年以降にCAR-T 療法製品をはじめとした新薬の活発な上市が予想され、2020 年の市場規模は738 億円に急拡大すると見込まれる。その後2025 年にかけては、癌や単一遺伝子疾患、眼疾患、神経疾患、虚血肢およびうっ血性心不全等の慢性疾患、HIV 感染症に対する遺伝子治療薬が普及して、市場規模は2025 年に1 兆円の大台を超える見通しだという。

 2026 年以降も健常人ドナーの細胞から作製されるoff-the-shelf のCAR-T 療法製品(ユニバーサルCAR-T)やゲノム編集を基本コンセプトとした遺伝子治療薬の登場によって、市場の更なる成長が期待され、2030 年の市場規模は5.6 兆円に達すると予想されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)