「オバマ再選」で日経平均は9000円台から8700円台に切り下がった

2012年11月09日 11:00

大統領選挙だけでなく決算発表の影響も大

 今週はアメリカの大統領選挙投票日(6日)、中国の共産党大会(8日から)という政治のビッグイベントを控え、大統領選開票の7日以外は見送り気分が支配的だった。7日以外は東証1部売買代金が1兆円を割る薄商いで、5日は9000億円をも下回った。7日後場に開票速報で「オバマ氏再選確実」が伝わる前からFRBの政策継続、ドル安を先取りする形で為替が円安基調から円高基調に変わり、それを節目に週後半の株価は低迷。8日には8900円、9日には8800円を割り込んだ。「政治の週」に日経平均終値は5日連続で下落して9000円から大きく下離れし、再び「円高、金利安、株安、薄商い」のリスクオフ・セットにシフトしてしまった。

 先週末、雇用統計は悪くなかったが大統領選挙前の利益確定売りでNYダウが139.46ドル下落したのを受け、5日の東京市場は反落で始まった。しかし日経平均が何度も9000円を割りながらすぐに反発する底堅い動きで、1ドル80円台半ばの円安が下支えになった。日経平均終値は43.78円安の9007.44円。食品、航空の他、2週連続年初来高値更新の富士重工 <7270> など自動車が好調で、決算発表直前のトヨタ <7203> が4日続伸、ホンダ <7267> 、日産 <7201> も上がった。売られたのは電機と小売で、パナソニック <6752> は37年ぶりの400円割れの388円で終わり、格付けを「投機的水準」にされたシャープ <6753> やソニー <6758> も大幅下落した。小売では業績予想下方修正のヤマダ電機 <9831> が大幅安、10月の国内既存店売上高が減少したファーストリテイリング <9983> も下げた。水産、海運、証券も軟調だった。大引け後、トヨタは報道通りに通期営業利益予想を1兆円から1兆500億円に、最終利益予想も前期の2.8倍の7800億円に上方修正。「ホンダショック」が走ったホンダとは対照的だった。

 6日は為替が一時79円台の円高に振れたこともあって日経平均は9000円を割り込んで始まり、利益確定売りも入って32.29円安の8975.15円で引け、高値と安値の差が33円という狭いレンジのもみあいに終始した。買われたセクターは関西電力 <9503> や九州電力 <9508> など電力、旭硝子 <5201> などガラス・土石、キッコーマン <2801> など食品、鉱業で、売られたセクターは川崎汽船 <9107> はじめ海運、業績予想を下方修正した大日本スクリーン <7735> 、ソニーなど電機、機械、鉄鋼、銀行、証券で、輸出関連株がおおむね不調だった。自動車はトヨタが30円高で5日続伸ながら、ホンダが26円安、日産も14円安と明暗を分け、前日大きく下げたパナソニックは値動きなし。日産は決算発表で最終利益見通しを800億円も下方修正し、増益から減益に暗転している。

 7日はアメリカ大統領選挙の開票速報を横目で見ながら先物主導で大きく動いた。なぜか「ロムニー有利」を織り込むNYの株高で日経平均が前日比57円高まで上げて始まった前場は接戦が伝えられたが、開票が進むと次第にオバマ有利になり、FRBの超低金利政策継続を懸念して為替が一時79円台の円高に振れたために下落。後場の1時20分過ぎに「オバマ再選」の速報が流れた後は前日終値近辺で行ったり来たりし、終値は2.26円安の8972.89円。見送り気分解消で東証1部売買代金は1兆1000億円を超えた。住友金属鉱山 <5713> など鉱業、携帯電話純増数を発表し10ヵ月連続首位を守ったソフトバンク <9984> など情報・通信、鉄鋼、非鉄金属が上昇し、アサヒグループHD <2502> など食品、セブン&アイHD <3382> など小売、JAL <9201> など空運、前田建設 <1824> など建設が下落した。前日に大幅減益に下方修正した日産は悪材料出尽くしで28円高。パナソニックは約8000万株の大商いで9円高と下げ止まり、ソニーも株価を回復した。

 オバマ再選&共和党下院過半数確定による「財政の崖」問題の深刻化を懸念してNY市場が312ドル安のハードクラッシュを演じたのを受け、8日の東京市場は日経平均8900円割れで始まった。共産党大会が開幕した中国の上海市場の軟調もあり一時は8811円と8800円割れ寸前まで下げ、135.74円安の8837.15円で引け、10月30日の日銀追加金融緩和後の上昇分を帳消しにした。景気ウオッチャー調査は3ヵ月連続で悪化。値がさハイテク株のファナック <6954> 、京セラ <6971> 、キヤノン <7751>が下げたため日経平均は大きく下落し、東証1部売買代金は再び1兆円を割った。新日鉄住金 <5401> など鉄鋼、東芝 <6502> など電機、トヨタ、ホンダなど自動車、パルプ・紙、鉱業、証券、保険、不動産など幅広い業種で全面安になり、上がったのは関西電力、東北電力 <9506> など電気・ガスと、ソフトバンクなど情報・通信の一部、ヤフー <4689> と提携したグリー <3632> 、DeNA <2432> などゲーム関連の一部、通期業績予想を上方修正したいすゞ自動車 <7202> あたりに限られた。

 9日はマイナーSQ算出日だが、SQ値8745.24円は波乱なく午前9時過ぎ早々に出た。「財政の崖」とギリシャの債務不安の再燃を懸念して朝方は円高が進行し、ドル円は79円台前半、ユーロ円は10Ⅰ円前半。日米とも国債が買われて長期金利は下落し、「リスクオン」などどこかに行ってしまった。日経平均は約3週間ぶりに8800円を割り込み、高値と安値のレンジは約50円と狭く、東証1部売買代金は1兆円割れと、見送り気分に支配され弱々しいリスクオフ相場が戻ってきた。後場は少し円安に戻し、CPIなど中国の経済統計が全般的に持ち直して上海市場も底堅く、日経平均終値79.55円安の8757.60円で取引を終えた。情報通信はNTT <9432> は業績下方修正ながら150円高だったがソフトバンク、KDDI <9433> は下落。ファーストリテイリングもファナックも売られた。グリーは続伸。輸出関連株の機械、電機、鉄鋼やゴム、電力、石油などが下げ、トヨタ、ホンダなど自動車もさえなかった。

来週の展望 アメリカの経済指標を手がかりに回復を模索

 中国の共産党大会は14日まで開催される。最終日に党中央委員を選出し、閉幕直後に中央委員会の全体会議で新しい総書記、政治局常務委員、政治局員が正式に決まる予定だが、市場に影響を及ぼすサプライズはない模様。「選挙の年」2012年は、まだ韓国の大統領選挙(12月19日投票)が残っている。

 国内の経済指標は、12日に7~9月のGDP速報値と企業物価、13日に9月の鉱工業生産指数が出るが、景気は下向きで数値は振るわない見通し。海外の経済指標は、アメリカは9日発表のミシガン大学消費者信頼感指数が、感謝祭明けの23日から始まるクリスマス商戦での商品の値付けを左右するため重要で、良い数字が出れば企業の利益増につながるためNY市場が活気づき、12日の東京市場も高く始まりそうだ。12日のNY市場は「復員軍人の日」の振替休日で休場。13日の月次財政収支は「財政の崖」がらみで注目されるかもしれない。この問題では当選したオバマ大統領が早急に議会対策に乗り出すと報道されている。14日は生産者物価指数、小売売上高が、15日は消費者物価指数、NY連銀製造業景気指数が、16日は設備稼働率、鉱工業生産指数がそれぞれ発表され、アメリカの景気の回復ぶりを確認できる。ユーロ圏では14日に鉱工業生産指数、15日にGDP速報値と消費者物価指数、16日に国際収支が発表されるが、悪い数字が出るのは予測がつく。怖いのは引き続き債務問題をめぐる政治がらみの突発的な事態だろう。

 来週の東京市場は主要企業の決算発表も終了して国内発の悪材料はほぼ出尽くすので、アメリカの経済指標の良さを手がかりに回復を模索する動きになりそうだ。「追加金融緩和はまたある」と言われているだけに、週の後半は翌週19日に始まる日銀の金融政策決定会合が意識されそうだ。為替レートの円安が修正されドル円が80円台に乗れば徐々に戻していけそうだが、ユーロのじり安は続いており、ヨーロッパ発の「地雷」が依然、懸念材料になる。ちなみに14日には渦中のスペインとポルトガルで最大労組のゼネストが予定されている。(編集担当:寺尾淳)