質の問題が最大課題の大学教育
「全国に大学が約800」「量より質」「学歴だけあっても」などなど、第3次野田改造内閣の、いわば看板大臣とも言える田中眞紀子文部科学大臣が2日の閣議後の記者会見中に発した言葉には大学教育のありようの問題が集約されていた。質の問題をどう解決するのかが田中大臣提起の最大課題になった。
田中大臣の発言の背景には司法試験合格者を育成できない法科大学院。相次ぐ定員割れ。大学卒の学歴が人格とイコールでなくなりつつある現実への懸念がある。田中大臣は「大学の教育の質の問題が就職の難しさにもつながっている」と就職問題にも波及させた。
田中大臣がどこまで大学教育に切り込めるのか。にわかに関心度が高まった。
発端は「短期大学を廃止し、大学を新設したい」と25年度大学設置へ認可申請した3件に対し、大学設置審議会が認可を妥当と答申するなか、大学設置の認可権限を有する田中大臣がこれを覆し、不認可としたことに始まる。
審議会の答申を覆す決断に賛否はあるものの、田中大臣の取り組みは動き始めたばかり。これからどういう成果を生んでいくのか期待を持った国民も少なくはない。
一方で、衆議院解散・総選挙で政権与党がかわる可能性もある中、田中大臣が投げ込んだ課題が継承、増幅されていくのか。政権与党がかわったとたん、不認可も撤回されるようなら、大臣がかわる毎に判断が左右される危険性もある。
今回の不認可については、野田政権としても田中大臣の判断を追認した。不認可とすることに野田佳彦総理にも、藤村修官房長官にも事前に報告していたことを田中大臣は明らかにし、藤村官房長官も報告を受けたとした。
藤村官房長官は「教育行政に責任を負う文部科学大臣としての政策的な判断だと考えている」との認識を示した。
田中大臣の教育政策の視点を伺わせる発言が「個人の多様性をもっと大切にし、本当の学力のある人間が自立していく社会を作らねばならない」という持論。
田中大臣は「小学校、中学校、高校までに自分探しをし、高校の頭くらいには、自分の将来性について、こういう仕事をしたいな、こういう研究をしたいな、こういう技術を身につけたいなと、そうしたことに気付くことが必要」と語り「日本は自分探しが遅い方だ」と早い時期から自分探しが始まる環境づくりの必要性を伺わせた。
大学の数が多すぎるということではなく、質の問題をどうするかから大学教育を点検していく。あわせて、大学設置を審議する審議会のありようも検討する、田中大臣は、その思いを今回の決断に集約させ、一歩を踏み出した。
「どういう大学を作っていくことが日本の将来、世界に貢献できる人材育成になるのか。大学設置審議会自身のありようから見直す」とした田中大臣。
「どのような設置審にすることが、50年、100年後のためにいいか、ビジョンをたて、速やかに、かつ慎重に進めたい」と時折、上を見ながら、かつ慎重に考えながら話した。(編集担当:森高龍二)