3月5日、川崎重工の神戸工場において、パナマのハンドベル シッピング エス・エー向け58型ばら積運搬船の進水式が行なわれた。同社が新たに開発した58型ばら積運搬船の14番船で、進水後岸壁にて艤装工事を行い、5月に竣工し、船主に引き渡す予定とのこと。
今回進水式が行われたのは、穀類・石炭・鉱石・鋼材などの貨物が積載可能な5船倉を有する船首楼付き平甲板型。また、各ハッチカバー間の船体中心線上に4基の30トンデッキクレーンを装備しており、荷役設備の無い港湾でも荷役作業が可能だという。さらに、省燃費型ディーゼル主機関および高効率タイプのプロペラ、さらに同社が開発したカワサキフィン付ラダーバルブおよび抵抗の少ない滑らかな船首形状を採用し、推進性能を向上させることにより燃料消費量を低減させている。
かつては日本がその世界市場を独占していた造船業界。比較する指標により異なるため一概には言えないが、近年では中国・韓国に抜かれ、2011年上半期の受注量シェアは12.1%となるなど、大きく溝をあけられている。三菱重工神戸造船所が100年あまり続いた商船建造から撤退することからも厳しい状況が見えるであろう。今回進水式を行った川崎重工も、毎月のようにばら積運搬船を引き渡しているなど順調に見えるが、先に発表された第3四半期決算では、受注高が前年同期から303億円減の369億円、売上高も61億円減となるなど、その厳しさが数字に表れている。
供給過多とも言われ、他国の勢いに押されている日本の造船業界であるが、長年世界の造船業界をけん引することで築いてきた信頼を背に、高い技術力を武器とした高付加価値の造船などで、どれだけ踏みとどまることが出来るか。他の国々に負けない独自の魅力ある開発を続け、日本の造船が再興することを願いたい。