機器に取り付けたセンサーから情報を収集して有効活用するIoTに関しては、多くの中小企業で関心が高まっている。しかし、そのわかりにくさや投資費用の大きさから、導入を踏みとどまる企業が多かった。ただし最近では、これまで大企業が中心だったIoT(モノのインターネット)の導入に関して、中小企業の間でも検討が広がっているようだ。経済産業省が製造業を対象としたアンケート調査では、中小企業の6割超がIoT化を視野に製造データを収集していることが分かった。IoT導入による成功事例も見られるようになり、IoT化による生産性の向上などのメリットが広く認識されるようになった。一方、大半の企業でデータの活用までは至っていないとの課題も明らかになった。
同調査によれば、「国内工場でデータ収集を行っているか」のとの質問に対して、中小企業の66.6%が「はい」と回答。15年の40.6%と比較すると2割以上の上昇となった。さらには、営業利益が「増加している」と回答した企業の73.2%でデータ収集を実施していた。IoTの導入が、収益性の改善に貢献している可能性がある。一方で、実際のIoT導入への取り組みに関して、ラインや工程の可視化を「実施している」のは13.9%、「実施計画がある」および「実施したい」が合わせて38.9%と、まだまだ低い水準となった。ちなみに、大企業のデータ収集実施率も昨年より2割程度上昇し約9割となり、産業界全体でIoTへの関心が高まっていることが分かる。
経産省が発表した中小企業のIoT事例によれば、安価なコンピューターや通信機器を活用する事例が増えてきている。精密機械産業が集まる長野県岡谷町では、2016年末に「10万円からのIoT」の活動を開始した。1万円以下の格安マイコン「ラズベリーパイ」といった機器を中心にIoTシステムを構築。システムインテグレーターに頼らず自前での導入によりコストを抑えた。同システムでは、工作機械の背面にあるリレーボードの状態をデジタル信号に変換し、工場内の機械の稼働状態を一元的に管理する。
経産省は、中小企業によるIoTの導入を推進しており、全国の優良事例を取り上げて整理したうえで横展開していく予定。6月に閣議決定する17年版「ものづくり白書」にも上記調査内容が盛り込まれる。(編集担当:久保田雄城)