決算発表の減額修正の嵐に見舞われてもしっかり9000円台回復

2012年11月03日 11:00

日銀の追加金融緩和で為替の不安が和らいだ

 今週は薄商い、小幅な値動きで始まり、30日の日銀の金融政策決定会合で「11兆円の追加金融支援」が決まっても織り込み済みだったようで、30日の日経平均終値は8900円台を割った。ハリケーン襲来でNY市場が29、30日の2日間にわたって休場になった影響も受けたが、週後半は東証1部売買代金が連日1兆円を超え、株価も盛り返して9000円台を回復した。

 29日は、先週末の下げの反動、NYダウの小幅プラスから前場は小反発だったが、昼休みにホンダ <7267> が業績予想を下方修正する「ホンダショック」が走って後場は日産 <7201> 、トヨタ <7203> など自動車株が売られた。NTTドコモ <9437> の業績下方修正がソフトバンク <9984> 、KDDI <9433> 、ソニー <6758> など日経平均寄与度が大きい情報通信銘柄を巻き込み、アジア、特に上海市場の軟調が影響して新日鉄住金 <5401> など鉄鋼株も下げた。翌日の日銀会合に期待して三菱地所 <8802> 、三井不動産 <8801> など不動産株や三井住友FG <8316> など銀行株が健闘して盛り返し、日経平均は大引け直前までプラスだったものの3.72円安の8929.34円で引けた。この日の主役のホンダは117円安、NTTドコモは7400円安で上場来安値を更新した。

 30日は日銀会合をにらんで市場は見送り気分に支配された。発表が遅れ「サプライズがあるのでは?」と期待を持たせたが、2時46分、資産買入等の基金を11兆円程度増額する追加金融緩和を発表。事前の報道と大差なく期待はずれの失望売りを誘う。大引けまで一気に下げ、終値は87.36円安の8841.98円と半月ぶりの安値で終わった。駆け込み売りで東証1部売買代金は1兆2500億円を上回った。東証33業種で上がったのは海運、証券のみ。塩野義 <4507> 、日野自動車 <7205> が年初来高値を更新し、シャープ <6753> 、JAL <9201> 、野村HD <8604> 、キヤノン <7751> が買われたが、前日よかった金融、不動産は売られた。

 31日は買い戻しに加え、機関投資家の月末のドレッシング(お化粧)買いも入って日経平均は4日ぶりに反発。前日の下げをほぼ帳消しにする86.31円高の8928.29円で引けた。日銀発表以後の円安基調に変わりはなかったが、後場に8985円をつけた後、4日間休場だったNY市場の再開を見極めたい投機筋の先物利益確定売りが入って上げ幅が抑えられた。コマツ <6301> など機械、日立 <6501> など電機、海運、鉄鋼、自動車、保険が買われたが、アサヒグループHD <2502> 、JT <2914> など食品、医薬品、小売の一部に大きく下げる銘柄がみられた。自動車株は日替わりヒーローで、前日の日野に続いて通期業績予想を増額修正した富士重工 <7270> が年初来高値を更新し、トヨタ、ホンダ、日産も反発した。ピークを迎えた決算発表は、商船三井 <9104> が減額修正ながら円安等を好感して6円高、三菱重工 <7011> が増額修正なのに10円安など、市場の反応は複雑だった。

 11月1日は、前日の大引け後の決算発表で通期業績予想の減額修正が相次いだために日経平均は一時8900円を割ったが、NY市場の休場明けは小幅高で、ドル円相場が一時80円を回復したこともあり、すぐに回復した。後場は中国製造業PMIの発表が堅調で上海市場が3日連続で上昇したのを受けて強含みで推移した。この日の主役は業績予想を大幅下方修正したパナソニック <6752> で、ストップ安終値414円は37年ぶりの安値水準。それに足を引っ張られても、業績予想が良かった京セラ <6971> や業績上振れ期待が高まったソフトバンクが上げ、日経平均終値は18.58円高の8946.87円だった。年初来高値更新の日本ハム <2282> など食品、自社株買い発表のアステラス <4503> など医薬品、海運、不動産は買われたが、ソニーなど電機、鉄鋼、非鉄金属、鉱業はさえなかった。

 2日の日経平均はいきなり102円上げて9000円台を回復して始まった。ドル円相場が80円台前半で推移し、ISM製造業景況感指数好転でNY市場が136.16ドルの大幅高だったのが好感された。後場はアジア市場が全面高でも夜のアメリカの雇用統計を意識して上値が抑えられたが、日経平均は104.35円高の9051.22円で今週の取引を終えた。値上がり銘柄が7割を超え、先物主導ではなく現物中心に幅広く買われた。ファナックは490円の大幅高で、決算発表前のJALは65円高の高値引け。トヨタ、日産、ホンダなど自動車が買われ、三井不動産など不動産、三井住友FGなど金融、野村HDなど証券も好調だった。業績予想を黒字に据え置いたソニーは買われたが、最終赤字4500億円のシャープ <6753> が下げ、パナソニックも続落した。通信はソフトバンク、KDDIは上がったがNTTドコモが売られた。大型株の下げではニコン <7731> の125円安が目立った。

来週の展望

やはりアメリカ大統領選挙と中国共産党大会

 先週はアメリカ東海岸のハリケーン、減額修正が相次ぐ主要企業の決算発表で波乱含みだったが、後半はアメリカの株高、80円台になった円安、中国経済指標の底入れ期待などを背景に景気敏感株を中心に値上がりし、日経平均は9000円台を回復した。来週はガラリと変わって「政治」が焦点になる。

 2日に発表されるアメリカの雇用統計は6日投票のアメリカの大統領選挙に影響し、失業率が上がるとロムニー候補有利、下がるとオバマ大統領有利と言われているが、勝敗は日本時間で7日の午後から夜にかけて判明する。7日の東京市場は開票速報に左右されそうだ。政権運営を左右する議会の新勢力分野も見逃せない。オバマ大統領が再選されると現在の金融政策を続行で「QE4」まで想定されドル安、ロムニー候補が勝利すると金融政策が近いうちに引き締めに転じドル高になると予測されている。東京市場はオバマ勝利なら横ばい、ロムニー勝利なら上昇か?

 もう一つの重要な政治イベントが8日に始まる中国の共産党大会で、習近平総書記、李克強首相の就任は決まっているが、7人の政治局常務委員の人選、胡錦濤国家主席が中央軍事委員会主席も退任して権力を習氏に全面移譲するかどうかがポイントになる。党大会冒頭で権力争いをめぐる混乱が露呈したりすると、市場にはマイナス材料になる。特にコマツなど中国関連株は要注意だ。

 ヨーロッパの債務問題は聞こえてこなくなったが、4日、5日にはG20財務相・中央銀行総裁会議がメキシコシティで開かれる。主要議題はその債務問題とアメリカの「財政の崖」だが、米欧の有力メンバーは揃って欠席の見通しでサプライズはなさそう。あるとすれば銀行の新自己資本規制「バーゼルIII」がらみの動きで、8日のイングランド銀行とECBの政策金利発表も気になる。市場関係者の間では早くも「日銀はもう一段の金融緩和を行う」という期待が語られているが、海外発の要因で好調な金融、証券、不動産の株価に下向き圧力がかかる恐れがある。

 決算発表は峠を越えたが、5日のトヨタ、6日の日産など自動車各社が残っている。だが、たとえ中国での販売減がらみで減額修正が相次いだとしても、数字がアナリストの予想と大きくずれていなければ影響は限定されるというのが、最近の決算発表後の株価の傾向である。

 週末の9日はマイナーSQ算出日だが、10月よりも市場環境が好転し、売買も増えているので、それほど波乱なく終わりそうだ。

 経済指標はアメリカは回復、中国は底入れの気配ありで、日本の機械受注、国際収支、景気ウォッチャー調査(8日)、マネーストック(9日)の数字が悪くなければ、鉄鋼、自動車など景気敏感株を中心に日経平均1万円台に向けて弾みがつくだろう。ドル円レートは80円まで戻して円安基調なので、ヨーロッパ発のネガティブサプライズや中国の政治の混乱が起きなければ、日経平均は悪くても9000円前後の水準は維持できそうだ。(編集担当:寺尾淳)