ここ数年でタクシー料金の値上げが続いていたなか、2017年1月30日から東京都23区、武蔵野市、三鷹市で初乗り運賃を約1キロ410円となる値下げに踏み切った。タクシー業界は、「配車アプリ」や「ライドシェア(相乗り)」で世界的にシェアを広げる米 Uberなどの新興企業の参入を脅威として顧客獲得に向けた新たな取り組みを模索している。2020年の東京五輪・パラリンピックでタクシー不足が予想され、来年度には配車アプリを応用して他人同士をタクシーで相乗りさせる「相乗り営業」について都市部で解禁できるかどうか検討が開始された。Uberやライドシェアサービスの本格参入を前に、タクシー業界は新たな転換期を迎えつつある。帝国データバンクは、2017年4月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(147万社収録)の中から、2016年(2016 年 1~12 月期)決算の年収入高が判明した国内タクシー業者3385社を抽出し、収入高総額・収入高推移、地域別、業歴別、従業員規模別について分析した。
国内タクシー業者 3385 社のうち、2015年および2016年の年収入高が判明した3110社を対象に各年の年収入高合計をみると、2016年は1兆1236億5700万円となり前年比5億1700万円(0.05%増)の微増となった。2014 年~2016 年における3期分の年収入高が判明した2971社の動向をみると、2016年は「増収」企業が512社(構成比17.2%)で、「減収」企業が861社(同29.0%)となった。「横ばい」企業は1598社(同53.8%)と全体の半数以上を占めた。加えて、「2 期連続増収」企業は184社(構成比6.2%)となる一方、「2期連続減収」企業は391社(同13.2%)となった。
国内タクシー業者3385社のうち本店所在地を都道府県別でみると、「東京都」が309社(構成比9.1%)で最多となった。次いで「北海道」(199社、同5.9%)、「福岡県」(171社、同5.1%)となった。3385社のうち、2015年および 2016 年の年収入高の業績比較が可能な 3078社を都道府県別でみると、増収企業の割合が最も高かったのは「石川県」(12社、構成比44.4%)となった。2015年3月に北陸新幹線の開通によって金沢市周辺を中心に観光客数が増加し、タクシー利用者が増えている。2位の「奈良県」(7社、同35.0%)は 2015年以降、訪日外国人観光客数が急増しており、奈良市を中心にホテル建設が進められている。また、4位の「和歌山県」は、2016年の県内における観光客数(観光客動態調査・速報値)が約3487万人(前年比104.4%)を突破し、1959年の調査開始以来、過去最多を更新している。外国人観光客に加え、2016年に放映されたNHK大河ドラマ「真田丸」の主人公が配流されていた地として注目されたことで観光客数が急増した。このように観光客数が増加しているエリアはタクシー需要が高まり、増収企業の割合が高まった要因といえる。
一方、減収企業の割合が高かったのは「秋田県」(21社、構成比 53.8%)となった。秋田はタクシーの供給過剰エリアとなっている。今年1月30日に東北運輸局は、秋田市の秋田交通圏内の法人と個人タクシーが計52台を減車するとの特定地域計画を東北で初めて認可した。今後はタクシーの供給過多エリアを中心に、適正車両数に向けた減車を進めていくことが予想されるとしている。(編集担当:慶尾六郎)