国交省、2019年にシートベルト・リマインダー全席装備義務化。本当に可能なの、それでいいの?

2016年11月27日 14:18

Seat belt_edited-1

「シートベルト・リマインダー」全席設置義務化には、いくつか課題もありそうだ。日本で販売の主流となっている3列シートミニバンの3rdシートはどうするのか?

 交通事故によるクルマの乗員死亡を防ぐ目的で国土交通省は、シートベルト装着しないでクルマを走行させると、アラームが鳴り続ける装置「シートベルト・リマインダー」を乗用車全座席に装備することを義務づけると正式に発表した。

 2017年6月に道路運送車両法の保安基準を改正し、2019年にも義務化する予定だという。乗用車のリアシート乗員がシートベルト非着用で死傷する事故が多いことから、現在運転席だけにシートベルト・リマインダー設置を義務づけている規定を全席に拡大するというわけだ。

 現在の保安基準によれば、乗用車の助手席およびリアシートに同装置を取り付けるかどうかの判断は、各自動車メーカーの考え方に任せている。現状で、自動車メーカーの判断で、助手席にもシートベルト・リマインダー設置したクルマもある。が、警告音を鳴らすというより、メーターナセル内の警告灯でドライバーの告知するスタイルが多い。また、後部座席への装備はきわめて少ない。

 ただ、この装備、いくつか課題もありそうだ。日本で販売の主流となっている3列シートが標準のミニバンの3rdシートはどうするのか。おおむね3rdシートは荷物の置き場として使う場合が多く、クルマを発進させる度に“ピーピー”と警報が鳴るのは耐えられないという意見もある。また、3rdシートはフォールダウンやチップアップで収納してラゲッジ拡大のためにシートアレンジパターンが多彩だ。果たして、複雑な収納可倒式3rdシートに座面圧力センサーを内蔵させる「シートベルト・リマインダー」の設置が簡単に出来るのか?という疑問もある。

 また、万が一の事故の際、後部座席の乗員が自力でベルトを外せない場合を想定し、外部からの救援対処手段とセットになっていないと危険だ。多くの国産車が採用するオートドアロック(走り始めると自動で全ドアをロックするシステム)が、事故の際に自動的に解除される仕組みとセットであるべきだ。

 また、普通の4ドアセダンでも後部座席に荷物を載せるケースもある。そのあたりは国交省も考えたらしく、警報はシートベルトを着用せずにクルマをスタートさせると鳴るのではなく、一度乗員がベルとを装着した後、走行中にシートベルトを外すと鳴る仕組みにするという。ただし、出発時に後部座席の人がベルトを着けていなければ、運転席のメーターナセル内の警告灯が点灯する機能の導入を求めるとしている。

 今回の義務化対象にはタクシーも含む。現在、対象外であるバスやトラックの運転席と助手席についても、「シートベルト・リマインダー」設置を義務とする予定だという。

 国交省は15年春、自動車の世界的な基準を決める国際会議で今回の規制を提案。11月16日にスイス・ジュネーブにおける同国際会議で採択されたことで自信を深めたようだ。同省によると保安基準の改正後、自動車メーカー各社や業界団体と協議して実施時期などを詰めるとしている。(編集担当:吉田恒)