国土交通省はタクシーを含む乗用車の全座席にシートベルトリマインダー設置の義務化を発表した。シートベルトを着用せずに走行すると警報や警告灯でドライバーに知らせるシートリマインダーの設置義務はこれまで運転席に限られていたが、今回の安全基準改正によって前部席だけでなく後部席乗員の安全確保向上が期待されている。
国土交通省の安全基準改正は国連欧州本部で開催された自動車基準調和世界フォーラム第170回会合において、日本が主導している警報対象座席を拡大するための国際基準改定案が採択されたことを受けての措置。今後は有職者会議での審議やパブリックコメント等を経て道路運搬車両の保安基準とし、早ければ2018年6月には改正法案が発効される。
シートベルト着用は1992年に運転席と助手席が、2007年には後部席も義務化された。警察庁と日本自動車連盟の合同調査データによると、16年度のシートベルト着用率は運転者が98.5パーセント、助手席同乗者が94.9パーセントとなっている一方で後部席同乗者は36.0パーセントに留まっている。
自動車事故による後部席乗員の死亡重傷者は07年以降、減少傾向を続けており、シートベルト着用義務化の効果が認められているが、死亡事故時の非着用者率は66パーセントと高く、非着用が受傷程度の大きさを物語っている。非着用で事故が起きた場合、正面衝突であれば後部席中央の乗員がそのままフロントガラスを突き破ったり、側方追突では車が回転する遠心力で車外に放り出されるケースも報告されている。
後部席乗員のシートベルト非着用に対してはメーカーもこれまでさまざまな工夫を行っている。トヨタ自動車<7203>はベルト差し込み口を片手で操作しやすい自立式に順次切り替える方向で、日産自動車<7201>は着用時の圧迫感を20パーセント軽減する低フリクションシートベルトを開発した。スバル<7270>はすでに一部の車種に後部席シートベルトリマインダーを標準装備している。
全席シートベルトリマインダーの装備義務化によって後部席乗員の安全性は高まるが、座席に荷物を置いただけでも警告音が発するなど加圧センサーを含めた警告システムに不満を上げるユーザーも少なくない。メーカーが基準改正をクリアするために高いコストをかけてもユーザーがシートベルトを締めなくては意味のない装備となってしまう。後部席乗員の死亡重症率を軽減するためには、シートベルト着用を啓蒙すると同時にメーカーのシートベルトリマインダー技術開発も大切な要素となる。(編集担当:久保田雄城)