三菱重工が、交通・先端機器事業部と機械事業部とが個々に所掌していた加速器関連事業を、機械・鉄構事業本部直属の組織として集約・統合し「先端機器事業推進部」を新設すると発表。国家プロジェクト向けの加速器コンポーネント事業と、加速管を用いた放射線治療装置などのシステム製品事業とを融合することで、加速器システム事業の拡大とその民需転用・海外展開の強化を図る。
集約・統合の対象となるのは、常伝導・超伝導加速器、放射線治療装置、レーザー溶接機・切断機、加速管応用システム(電子滅菌、危険物検知装置など)、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)製造装置などの技術・製品。これらはこれまで交通・先端機器事業部(神戸、三原)、機械事業部(広島)が個々に所掌してきた。新設する先端機器事業推進部は、これら各部署に分散していた営業機能を本社に集約するとともに、神戸の交通・先端機器事業部が保有してきた技術および設計業務を三原に統合したもの。
世界の加速器市場は、あらゆる分野において年々拡大の一途を辿っている。PETなど診断装置や癌等の治療装置などの医療分野、イオン注入機や電子線装置などの普及が進む工業分野など、それぞれの装置の年間成長率は約10%と言われており、今やグローバルレベルでの重要な産業として位置づけられている。さらに、これまでは米国をはじめとする先進国がその需要と供給の双方をけん引してきたが、中国やアジア諸国などの新興国での需要も伸長し始めるなど、大きな変化が起こり始めている市場でもある。環境変化に耐える強固な体質をつくり、新規市場への参入による事業の拡大と経営の安定化をはかっていくための今回の組織改革は、必然のことと言えるのかもしれない。