富士経済、一次・二次電池の世界市場調査を発表

2012年03月02日 11:00

 富士経済が、リチウムイオン二次電池を中心に、一次電池・二次電池の世界市場についての調査結果を発表した。それによると2010年の電池市場(一次電池、二次電池の合計)はリーマンショックに端を発した世界的な景気後退からようやく需要が回復し、2008年実績レベルの5兆8274億円。2011年には前年比3.1%増の6兆54億円が見込まれるという。

 乾電池など、放電のみが出来る一次電池市場は、単価の下落と環境負荷・CO2削減対策として二次電池への移行が進んでいることもあり、横ばいから微減で推移すると予想。2011年は、国内では東日本大震災、海外ではハリケーンや地震などの発生により、世界的に乾電池の需要が拡大したが、2012年はその反動がくると予想している。また、一次電池市場の90%(2010年実績)を占めるマンガン乾電池とアルカリマンガン乾電池であるが、マンガン乾電池からアルカリマンガン乾電池へシフトしており、2011年に東日本大震災やハリケーンなどの特需を主に受けたのがアルカリマンガン乾電池であるという。その他、補聴器を主用途とする空気亜鉛電池の市場が堅調に推移。交換需要が非常に大きく、近年は中国やインドなどでも富裕層を中心に補聴器の利用が広がっており、需要が拡大している。

 一方で、一次電池以外の電池を指す二次電池市場は、一次電池からのシフト、モバイル機器やコードレス機器の増大などから、今後も拡大すると予想される。単価は下落しているものの、応用製品の生産増による数量の大幅増がそれを上回っているという。二次電池市場の73%(2010年実績)を占めている鉛蓄電池は、国内では頭打ちの状況であるものの、海外ではアジア新興国を中心に順調に拡大。ニッケル水素電池も、小型はリチウムイオン二次電池への移行により縮小するものの、大型はHV向けが順調に増加し、トータルとして2016年に2010年比40.8%増の3710億円と予測されている。さらに、市場の20%(2010年実績)を占めるリチウムイオン二次電池は、ニカド電池やニッケル水素電池(小型)からの移行が続き、また、携帯電話やポータブルAV機器、ノートブックPCなどの生産も増加、車載向けの本格化と産業用の電力貯蔵向けの立ち上がりも期待されることから、2016年には2010年比2.7倍の2兆4028億円、構成比は37%に上昇すると予測している。

 この報告書では、いわゆる調査会社などの統計には載ってこない、コピー製品をはじめとする比較的性能の劣るリチウムイオン二次電池(B級品)市場の調査結果も発表されている。Nokiaをはじめとする大手ブランドによるコピー製品対策強化や、所得水準向上による本物志向の高まり等を受け、2011年の市場は前年比18.3%減となっているという。市場拡大と対照的なこの数字は、コピー製品対策等が、健全な市場を堅持する為には有効であることを示す好例であろう。日系企業も今後、愚直に技術を高めるだけでなく、こういった取り組みに注力していくことが必須ではないだろうか。