政府は2014年4月に消費税8%とする増税を実施。その前後では、駆け込み需要が発生しマンションの販売戸数が増加したのち、反動減で販売が落ち込むという一連の流れがあった。ただし、政府は増税時の反動減による影響を緩和するため住宅ローンの減税を実施したほか、現在はマイナス金利の影響で消費者も低金利での借り入れが可能な状況というプラス要因もある。
帝国データバンクでは、2017年5月時点の企業概要データベース「COSMOS2」(147 万社収録)の中から、マンションの分譲販売を主業とし、2016 年(2016年1月期~2016 年12月期)中に迎えた決算で年商50億円以上であった企業102社を抽出。これら企業を「マンションデベロッパー」として、売上高の推移、損益(当期純損益)の状況などについて分析した
今回の調査対象となるマンションデベロッパーは、102社。そのうち45社(構成比44.1%)が「東京都」に本社を置いていることが判明した。次いで、「大阪府」に16社、「福岡県」に10社が所在している。
調査対象102社の売上高合計を見ると、2016年は約2兆7574億円(前年比約2.6%増)となった。推移を見ると、2013年(売上高合計約2兆7273億円、前年比約 5.5%増)、2014年(同約 2兆9575 億円、同約8.4%増)は消費増税前の駆け込み需要などが追い風となり増加傾向にあったが、2015年はその反動減で前年比 9.1%減の約2兆6874億円まで落ち込んでいた。こうしたなかで、2016年は増加に転じており、反動減からは回復する形となった。
2016年の決算で増収を果たした企業(増収企業)は65社判明し、構成比は 63.7%であった。2015年は、増収企業が50社(構成比49.0%)、減収企業が 52 社(同51.0%)で、減収企業の構成比が高かったが、2016年はこの比率が転じて増収企業の構成比率の方が高くなった。
2016年に黒字計上となった企業は、99社(構成比97.1%)であった。一方、赤字計上となった企業は3社(同 2.9%)であった。赤字計上した企業の推移を見ると、2014 年は3社(同2.9%)、2015年は5社(同4.9%)で増加していたが、2016年 3社(同2.9%)となった。売上高合計が直近ピークとなった 2014 年の水準と、2016年の水準が同程度になっており、大多数の企業が利益確保できたことがわかった。
これまでは、金融機関の不動産業に対する融資姿勢が前向きであったため、マンションデベロッパーは新規案件を手がけ業績を伸ばしやすい環境にあった。しかし、今後は金融庁が不動産向け融資残高に関心を高めている背景もあり、金融機関の融資姿勢が変化する可能性がある。また、足もとのマンション販売戸数の推移が不安視されているなか、税制優遇措置の打ち切りや、消費税10%への再増税が控えており、このまま回復基調が続くとは言い切れない状況であることは否めないとしている。(編集担当:慶尾六郎)