セブン&アイHD<3382>が、鈴木前会長に退職金として約10億円支払っていたことが明らかになった。持ち株会社セブン&アイHDの事業子会社である、セブン-イレブン・ジャパンが5億9600万円、イトーヨーカドーが5億2000万円を主に支払った。
鈴木氏はイトーヨーカドーの取締役時代に、イトーヨーカドーのオーナー伊藤雅俊氏に直談判し、米国セブン・イレブンの日本への導入を主導。セブン・イレブンの日本での展開を成功に導いた立役者であり、日本のコンビニエンスストアの生みの親的存在である。
一貫してセブン・イレブンの経営に携わり、現在のコンビニ業界トップの礎を築いている。その後、2005年にはセブン・イレブン及びイトーヨーカドーを傘下に持つ、セブン&アイHDの会長に就任し、イトーヨーカドーの経営にも関与するが、2016年5月に人事を巡る混乱を契機に追われるように会長職を辞任。現在は、経営の一線から外れている。
退職金の過多の議論はあるものの、鈴木元会長が日本にコンビニを根付かせた功績は誰しもが認める所である。尚、約10億円という退職金は、日産・ゴーン会長の年間報酬と同程度の金額である。
鈴木会長が去った後のコンビニ業界は、ファミリーマートがユニーグループと統合しユニー・ファミリーマートHD<8028>が設立されるなど、市場再編の動きはあるものの、セブン・イレブンの業界内での強さは今も抜きん出ており、鈴木氏の遺産は未だ健在と言える。
小売業の主役がスーパーからコンビニに移り、その移行を主導した鈴木氏も既に84歳である。しかしながら追われるように経営の一線からはなれたものの、セブン・イレブンに未だ鈴木イズムは浸透している。
今後セブン・イレブンは本格的に鈴木会長後の経営時代に入ることになるが、これまで通り業界内で圧倒的な強さを有するセブン・イレブンの地位を維持することができるのか?コンビニの店舗数減少で、淘汰の時代に入りつつある中、セブン・イレブン経営陣の経営手腕が今後はこれまで以上に問われることになりそうだ。(編集担当:久保田雄城)