ノーベル賞効果を打ち消すスペイン国債の格下げとソフトバンクの暗転

2012年10月13日 11:00

今週の振り返り、SQ日に日経平均をコントロールした仕掛け売り

 10月8日は「体育の日」の祝日で今週の営業日は10月9~12日の4日間。12日は第2金曜日で、オプション取引のみ特別清算値を算出するマイナーSQ算出日だった。日経平均終値は前週末の8863.3円から12日の8534.12円まで4日連続で下げた。
 10月8日、今年のノーベル医学・生理学賞が「iPS細胞」研究の第一人者、京都大学の山中伸弥教授に授与されることが決定すると、9日は寄り付きから「iPS細胞関連銘柄」に買いが集まり、タカラバイオ <4974> 、コスモ・バイオ <3386> 、DNAチップ研究所 <2397> がストップ高比例配分、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング <7774> も一時ストップ高になり、医学生物学研究所 <4557> 、メディネット <2370> 、テラ <2191> も上げた。「創薬ベンチャー」銘柄も軒並み上昇し、債務超過で有価証券報告書を提出できず名証が上場廃止を決めたECI <4567> まで連れ高になった。代表銘柄のアンジェスMG <4563> 、そーせいグループ <4565> は前場では大きく上げたが、投資家が利益確定して別のiPS関連への買い物色に動いたため、前日比マイナスで終えた。もっとも、10日以降はそれらの多くが反動で下げ、週末までパッとしなかった。ブームは1日で終わったような感があった。

 今週は「日米の決算発表前の様子見」に加えて、8日に世界銀行が東アジア・太平洋地域の経済成長率が鈍化するという見通しを示し、9日にIMFが世界経済見通しを下方修正するなど、グローバル景気への先行き警戒感による輸出関連株の業績下振れ懸念が基調にあった。セクター別では世界景気敏感株の海運、自動車、電機、鉄鋼が不調で、太陽誘電 <6976> や村田製作所 <6981> のような「iPHONE5」で人気化したアップル関連株も下げた。任天堂 <7974> は5日に東証から「TOPIXコア30」の構成銘柄を外されたため、大きく下落した。

 10日のS&Pによるスペイン国債の2段階引き下げ報道を受け、11日からは保有株圧縮の動きが不動産、小売のような内需系のディフェンシブ銘柄にも波及し、日経平均が続落した。そんな週後半の主役はソフトバンク <9984> で。11日にアメリカで携帯電話3位のスプリント・ネクステルを買収し、5位のメトロPCSコミュニケーションズの買収も検討と報じられた。しかし巨額投資による財務悪化の懸念で市場の反応は冷淡で、12日は別の事情もからんで16%下落の461円安だった。

 12日のマイナーSQに先立ち、それをにらんだ仕掛け的な売買が週前半から目立つようになっていたが、12日の本番はそれがピークに達した。前場では売買高ランキング1位と2位に日経平均寄与度が大きいファーストリテイリング <9983> とソフトバンクが前日比マイナスで並んだ他は全て前日比プラスで、日経平均がマイナス、TOPIXがプラスという作為的なデータが現れた。寄与度の高い2銘柄を狙い撃ちして日経平均を押し下げる仕掛け売りでSQ算出日に利ざやを稼いだ、海外の機関投資家とみられる勢力があった。そんなあからさまな仕掛けがまんまと成功するのが、東京市場の現状である。

来週の展望、SQも抜けたので8500円近辺での値動きか

 来週の発表指標は、アメリカは15日の小売売上高は横ばいの予測で、17日の住宅着工戸数、19日の中古住宅販売ともQE3のおかげで高水準持続と予測される。18日の半導体製造装置BBレシオも底打ち期待。一方、中国は成長鈍化を確認する週になりそうで、15日のCPIと生産者物価、18日の鉱工業生産、小売売上高、7-9月期の実質GDP成長率が注目される。日本はめぼしい発表指標がないものの、上場企業の3月期第2四半期の決算発表が徐々に増えてくる時期。円高や中国の景気減速、尖閣問題がらみの通期業績予測の下方修正が出てくると市場の不安感がより増すだろう。

 アメリカのほうの7-9月期決算発表は15日のシティ、16日のインテル、ゴールドマンサックス、17日のイーベイ、AMEX、バンカメ、18日のグーグル、マイクロソフトと注目企業が目白押し。トータルでは若干減益の予測だが、インテルのような銘柄の業績が大きく悪化すれば日本株への悪影響が大きいので注意が必要だ。欧州は18日、19日にEU首脳会議があるがその影響は翌週になると思われる。スペイン国債も気になるが、ユーロ安がさらに進む懸念もある。欧州発の突発的な事態で日経平均が8300円台に切り下がり、年初来安値(8295円)に迫る恐れもあるが、来週は大きな好材料もなければ大きな不安材料もSQを通過して出尽くしているので、心理的節目の8500円前後で一進一退する展開になりそうだ。外需株よりも内需株、大型株よりも中・小型株に期待できる。(編集担当:寺尾淳)