2017年1月21日(日本時間)、米国のトランプ大統領は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱を表明した。こうしたなか、米国を除く TPP 署名11カ国(TPP11)はチリ(3月)およびベトナム(5月)で開催された閣僚会合において、TPPで合意した高いレベルのルールの早期実現を追求するほか、米国の参加を促進する方策を含めて今後の選択肢の検討を11月までに完了することで合意した。また、TPPにおける包括的通商ルールは、政府が進める他の通商交渉だけでなく、海外取引を行っていない企業にも影響を及ぼすとみられ、TPP11の行方が注目されている。帝国データバンクは TPP11に関する企業の見解について調査を実施した。
TPP11は「自社の属する業界」にとって必要だと思うか尋ねたところ、「必要だと思う」と回答した企業は22.5%となり、「必要だとは思わない」(32.6%)を 10.1ポイント下回った。また、「分からない」(44.9%)は4割を超えた。TPP 協定の大筋合意直後にあたる前回調査(2015年12月調査)と比較すると、「必要だと思う」が7.2 ポイント減少した一方、「必要だとは思わない」は2.0 ポイント増加しており、自社の業界にとって米国が離脱したTPP11の必要性を捉えかねていることが浮き彫りとなった。
他方、TPP11が「日本」にとって必要だと思うか尋ねたところ、「必要だと思う」と回答した企業は51.7%と半数を超え、「必要だとは思わない」(12.0%)を大きく上回った。しかし、前回調査と比較すると、「必要だと思う」は12.8 ポイント減少した一方、「必要だとは思わない」は2.3ポイント増加した。日本全体で考えたTPP11の必要性は多くの企業が認識しているものの、12カ国で大筋合意し内容が具体化し始めた時期よりもやや見方が弱まっている様子がうかがえる。
企業からは「内向きの経済政策が結局戦争にもつながったことから、多国間でヒト・モノ・カネの往来を自由にし、広く全体で互いに利益を共有できる仕組みやチャネルが必要」(電気メッキ、山形県)や「世界的経済成長を図る目的を達成するには、可能な限りの自由貿易が必要である」(一般電気工事、山梨県)など、歴史的経緯や経済成長などを踏まえて自由貿易の推進が重要なことから、多国間でのルールを構築すべきという意見がみられた。他方、「米国が抜けた TPP では全く意味がない」(ソフト受託開発、福井県)や「TPP は、多国間の自由貿易を促進する一方で、海外からの値下げ圧力による国内企業の弱体化および国内経済のデフレ化の一因にもなり得るため、慎重に考える必要がある」(経営コンサルタント、東京都)、「食糧安保の視点で国内農業の保護が必要」(農業協同組合、東京都)など、慎重な対応を求める声も多くあがった。(編集担当:慶尾六郎)