双日と日立造船は、中国黒龍江省で馬鈴薯でんぷん残渣(搾り粕)を原料としたバイオエタノール製造の実証事業を開始したと発表。2014年3月までに、現地の馬鈴薯加工企業と共同で燃料用エタノールと発酵残渣飼料(DDG)を製造し、事業化に向けた採算性を検証するとのこと。生産された燃料用エタノールは、ガソリンと混合されてE10(ガソリンにエタノールを10%添加したバイオエタノールガソリン)として自動車用燃料として利用される。
今回の事業は、双日と日立造船が提案する「馬鈴薯澱粉残渣からのバイオエタノール製造実証事業」が、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「国際エネルギー消費効率化等技術普及協力事業」に採択されたことを受け、NEDOの委託事業としてバイオエタノール製造実証プラントを建設、技術の検証を行うもの。独立行政法人産業技術総合研究所が保有する馬鈴薯澱粉残渣の糖化・発酵技術と、日立造船の総合プラントエンジニアリング能力及び膜分離によるエタノール化無水技術を活用して燃料用エタノールを生産、双日の持つバイオマスに関する総合的な知識を活用して実証事業を進めていくという。
中国は、米国・ブラジルに次ぐ世界第3位のバイオエタノール生産国で、2020年までにE10を中国全土に普及させる方針を立て、既に黒龍江省・吉林省・遼寧省・河南省・安徽省等でE10の使用を義務付けている。また中国政府は食料保全の観点から、非食料および農業有機廃棄物等を利用したエネルギー植物を原料とするバイオ燃料生産を目指している。
日本企業が世界各国でバイオエタノールの研究・開発・生産を手掛けているにもかかわらず、日本国内ではその利用が進んでいない。混合燃料においても、E10の利用が義務付けられている国や地域がある一方で日本はE3(ガソリンに混合できるエタノールが3%)が上限であり、E10は未だ実証実験中である。食糧事情や天候などの影響を受けるため価格が安定しないことや、品質管理の難しさ、排ガスに含まれる窒素酸化物の量など、懸案事項は確かに多い。それらをいかにして解決して日本国内での利用を促進するか。今後の政府や企業の取り組みに注目したい。