文部科学省は、工学教育に関する有識者検討委員会の中間報告まとめを公表した。工学系の学部と大学院修士課程との6年一貫教育の導入など教育課程を柔軟化し、専門性・多様性に対応できる人材育成を目的としている。
ビッグデータ・AI(人工知能)・IoT(Internet of Things。モノとインターネット)・ロボット等など、ITが急速な進歩と多様化を遂げている一方で、我が国における工学系の大学教育は明治の頃から機械・電気・土木といった1分野を深く学ぶ体制のまま続いているのが現状だ。
有識者検討会議の中間報告ではこうした専門分野の研究を深化させる方向性では今後の社会の要請に応えられないとしている。「第4次産業革命」や「超スマート社会」への対応やその先の時代の新たな産業を創造するには、「スペシャリストとしての専門の深い知識と同時に、分野の多様性を理解し、他者との協調の下、異分野との融合・学際領域の推進も見据えることができるジェネラリストとしての幅広い知識・俯瞰(ふかん)的視野を持つ人材」を育成することが緊急の課題であるとした。
このことから現行の工科系教育の見直しを提言。具体的には学部と大学院修士課程による6年間一貫の「工学・情報大学院(仮称)」の創設を目指している。6年一貫という十分な時間を確保し、学生が専門分野だけでなく、幅広い知識を学ぶことが必要であるとした。また、非情報関連の学生にも情報関連技術教育の機会を多く採り入れる方針だ。
さらに「主専攻・副専攻(メジャー・マイナー制)」の導入が必要であることを強調。社会の変化に対応できるよう柔軟に対応し、学生が主体的に学べる環境づくりの推進も欠かせないと提言している。
情報社会は現在の社会に重要な産業的価値を持つ。日本の基盤技術はトップレベルである一方、システムや統合化では国際的に立ち遅れているという。この取り組みが産業基盤の強化や、今後のさらなる価値の創造に貢献されることを期待する。(編集担当:久保田雄城)