中国が人工知能(AI)の開発で巨額の新規投資計画「次世代AI発展計画」を発表した。同計画によれば、2020年には1500億元(約2兆4700億円)を超える市場規模が見込まれ、25年には4000億元(約6兆5600億円)、30年までに1兆元(約16兆4000億円)規模の市場形成を目指す。
中国が人工知能(AI)の開発で巨額の新規投資計画「次世代AI発展計画」を発表した。同計画によれば、2020年には1500億元(約2兆4700億円)を超える市場規模が見込まれ、25年には4000億元(約6兆5600億円)、30年までに1兆元(約16兆4000億円)規模の市場形成を目指す。同計画からは、AIを経済のけん引役にするとともに、中国がAIの理論、技術および応用面で世界をリードする意図が見て取れる。中国の大手テック企業やスタートアップは、AIの基礎研究において、ここ数年で着実に米国に追いつきつつあり、今回の計画はこの傾向を加速すると考えられる。
「次世代AI発展計画」では、AIのソフトウエアおよびハードウエア、知能ロボット・自動車、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などが重点発展分野に挙げられている。さらには、大学や研究機関と企業、軍による研究連携、AI専門家の育成、認知科学や心理学、数学、経済学などのAIによる研究推進が挙げられている。
AIが計画通り産業横断的に活用されれば、中国経済の拡大に大きく寄与し、中国は経済面での優位性を得ることになる。大手コンサルティング会社PwCの報告書によれば、AIの普及により30年には世界のGDPが14%押し上げられ、最も恩恵を受ける国としてGDP26%増の中国が挙げられている。それに次ぐ米国ですら14.5%増にとどまるが、上位2カ国で全体の増加分70%近くを占めるという。
中国はすでにAI大国となりつつあり、AI技術の商用化を推し進めてきた。政府の干渉が少ない深センなどでイノベーションが次々と生まれているほか、個人情報の取り扱いに対し国が強い影響力を持つことから、大量のデータ収集・蓄積が可能となる。これらはAI開発において有利に働く。一方で、現在AI技術で一強の座に君臨している米国に関しては、トランプ政権下で研究助成金の大幅削減などの逆風にさらされている。
中国はこの数年間で宇宙科学分野においても急速にリーダー的存在になりつつあることが、英ネイチャー誌にも取り上げられ、先進的な量子通信実験を行うなど世界における存在感を拡大している。AI技術や宇宙開発技術は軍事技術とも密接に結びついていることから、中国の軍事的野望についての懸念の声もあり、同計画の進捗に関しては世界中が注目すると考えられる。いずれにせよ、中国がこの先、AI技術開発の方向性に対して大きな影響力を得ることは間違いないだろう。(編集担当:久保田雄城)