10月1日より公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に経営委員会が設置された。経営委員長に就任した平野英治氏は3日の記者会見で業務概要書について言及し「(これまでの概要書は)大変分かりやすく書かれている」と評価しつつも「国民に十分に伝わっているかは別問題」とし「運用の考え方や実態を国民に分かりやすく説明していく」と述べ情報公開への取り組みをさらに強化する方針を示した。
経営委員会は一般の企業でいえば取締役会に相当し投資資産の構成の目安などを決める権限を持つ。GPIFにはこれまでにも専門家らで構成される運用委員会が存在したが、新たに設置された経営委員会では最終的意思決定権を理事長に集中させるとともに合議制の経営委員会に改組してガバナンスをさらに強化する。
経営委員会は高橋則広理事長と9人の委員で構成され、委員長の平野氏のほか、委員は、新井富雄東大名誉教授、岩村修二弁護士、加藤康之京大大学院特定教授、古賀伸明連合総合生活開発研究所理事長、小宮山栄公認会計士、中村豊明日立製作所取締役、根本直子アジア開発銀行研究所エコノミスト、堀江貞之野村総合研究所上席研究員という金融・経済の専門家で、計10人となる。
この理事長独任制から経営委員会による合議制は法改正によって行われたものであり、組織の改編の他、政省令で、株価指数先物の取引が、リスク管理の強化を目的として、解禁されることになった。先物や派生商品の運用拡大が容認された背後には、株式などの運用比率の増大に伴って評価額の変動が大きくなり、より高度で質の高いリスク管理を行う必要性が出てきたからだ。従来認められていた先物・オプション取引は債券と外国為替のみで株式では禁じられていた。新たなシステムでは株式についても制限付きながら認められることになった。
現在の大まかな資産構成は国内債券が35%、国内株式が25%、外国債券が10%、外国株式が25%、短期資産などが5%ほどである。2016年までの実績利回りは2.89%と十分な実績を出している。リスクの大きい株式の比率が増大してきているのも周知の事実である。今後、先物やデリバティブ取引の増大によって専門家以外その実体がつかめなくなると言う事態は充分にありうることである。
国民の生活を支える年金の運用である。運用対象の是非は別の問題として、その報告書は可能な限り専門家以外にも理解しやすい透明性の高いものでなければならない。今回、平野委員長の表明した情報開示方針は国民として歓迎されうるものであろう。(編集担当:久保田雄城)