企業年金運用の資産配分は伝統資産からオルタナティブ資産へのシフトが継続

2016年07月02日 18:40

 JPモルガン・アセット・マネジメントは、日本の企業年金基金を対象に、2014年4月から2016年3月にかけての運用状況の変化および今後の方向性について聞き取り調査を行い、その調査結果を発表した。

 調査結果から、年金運用の資産配分においては、伝統資産からオルタナティブ資産への資金シフトが継続してみられ、政策アセット・ミックス内のオルタナティブ資産の割合は過去最高の14.0%となった。

 1月の日銀のマイナス金利導入発表を受けて動向が注目されていた国内債券への資産配分割合は、対2014年度末比でほぼ横ばいの29.9%だった。今後の見通しに関しての調査では、マイナス金利導入を受けて現時点で運用方針変更を予定・検討中と回答した確定給付企業年金(DB年金)は約半数の49%に留まり、多くのDB年金は対応を模索、あるいは様子見をしている結果となった。ただし、約8割のDB年金が「マイナス金利政策によって運用環境が変化した(する)」と回答しており、今後、国内債券の投資妙味が薄れたとの判断から「国内債券への配分減」、さらに資金の受け皿としての「オルタナティブ資産への配分増」が検討されることが予想されるとしている。

 2015年度末時点でオルタナティブ資産に投資しているDB年金は全体の約7割で、その資産配分は国内債券の27.1%に次ぐ18.8%となっており、伝統資産以上に主要な資産クラスとなっている。オルタナティブ資産の投資戦略はDB年金によって大きく異なるが、総じて、安定的な収益源としての絶対収益型、インカム追求を目指すREIT・不動産・インフラへ多く投資する傾向がみられたという。

 また、絶対収益型やマルチアセットはDB年金の予定利率水準を問わずに幅広く採用されている一方、予定利率水準の高いDB年金が不動産やプライベート・エクイティを積極的に採用する傾向があった。

 今後のDB年金の資産配分の方向性としては、国内債券をはじめとする伝統資産からオルタナティブへの資金シフトが継続する中、一部のオルタナティブ戦略のパフォーマンス悪化も意識され始めており、オルタナティブ内での戦略変更がトレンドになる可能性がある。傾向としては、プライベート・デット、インフラ投資、実物不動産、REITなど、インカム系資産への配分増の検討が増加している。また、配分減傾向ではあるものの引き続き割合の多い伝統4資産においては、世界的な低成長や景気サイクルの進展に伴いベータ以外の収益源を求め、キャッシュ・コントロール、スマート・ベータなど、従来型のベンチマークから脱却する動きが見られるとしている。(編集担当:慶尾六郎)