米国のFRBは9月20日、FOMCで2008年のリーマン・ショック以後の継続してきた大規模な金融緩和を10月に縮小する決定をし、量的緩和策の完全解除に着手することを決定して異例の政策は正常化への転換点に入った。イエレン議長は「平常時は金利操作が最優先の手段だ」と述べた。FRBは14年まで計3弾の量的緩和を実施し、保有資産は当初の約5倍の4兆5000億ドルまで膨張した。今後、市中に出回る資金量を徐々に減らし次の景気後退時に再び緩和に踏み切る備えを行う。
一方、日銀では先月9月の会議で経営委員会の足並みが乱れた。しかし、日銀は黒田総裁による緩和策が始まって以来、常にその意思決定に足並みの乱れがあったようだ。14年10月の金融政策決定会合でも大規模な金融緩和の追加への是非にあたっても賛成5人、反対4人と票が割れた。副作用のリスクのある量的質的金融緩和は「短期決戦だからできた施策」として執行部が断行する緩和継続に批判的な委員がでてきた。
16年1月、中国経済不安にともなって実行されたマイナス金利は執行部の数名で決められ審議委員に知らされたのは会合の数日前で十分な議論が行えず表決は5対4とまたも政策委員が2つに割れることとなった。政策委員の足並みの乱れは金融界からも反発され、国会でも問題視された。16年7月、日銀は政策の枠組み修正を予告し、ゼロ金利政策によって収益を圧迫される市中に配慮して9月にイールドカーブコントロール(長短金利操作)へと移行し、市場との対話回復を試みた。
一方、米国FOMCやEU中央銀行は欧米経済の回復を受けて既に10月からの量的緩和の縮小、利上げの予告を行っている。FOMACのイエレン議長は「金融政策は予測可能で緩やかなものでなくてはならない」と発言している。サプライズを繰り返してきた日本と真逆だ。
日銀のバランスシートは買いオペによる大胆な緩和によってGDPに近い500兆に達しようとしている。日銀の利払いも相当の額になる。それ故のゼロ金利だがそれは収益圧迫を市中に押しつけるものだ。
イエレン議長はまた、「インフレターゲットは実体経済が悪くならない限りこだわる必要も無い」という趣旨の発言もしている。一方、日銀では新たに経営委員会が発足され、そこで2%目標の実現まで現状維持が決定された。すでに出口戦略に着手している欧米の中央銀行の中で日本だけが出口戦略が不透明で孤立する形となった。深刻なデフレ下にあった日本ではサプライズなどの荒技も必要であったかも知れない。現在、日本の景気は設備投資に牽引され緩やかに回復している。需給ギャップの計算は需要過剰である。黒田総裁の任期満了まで半年。もうサプライズの余地はない。市場と充分対話し経営委員会の十分な合議に基づいて出口戦略をも含む政策の方向性が決定されるべき時ではないかだろうか。(編集担当:久保田雄城)