文部科学省は問題行動調査を実施、全国の小中高校と特別支援学校で2016年度に把握したいじめ件数が32万3808件となり、前年度より9万8676件(44%)増え、過去最多となった事がわかった。小学校では特に急増し、いじめ認知件数は23万7921件で全体の7割を占めた。前年と比べると57%増加、中学校(20%)や高校(2%)と比べても大幅に上回る結果となった。
いじめの認知件数については、認知件数と発生件数の乖離が問題視されてきた。こういった指摘を背景に、国は今年3月、「いじめの防止のための基本的な方針」の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定などを行い、いじめの正確な認知に向けての取り組みを開始している。
2016年の1千人あたりのいじめ認知件数は京都府が最多で96件、最少の香川県では5件と19倍の差があった。いじめを認知した学校の割合は68%で前年度より6ポイント増加したが、3割の学校で『いじめはない』との回答があり、自治体や学校によって温度差を感じる結果となった。同省は、件数の少なかった地域に関してはさらなる認知を促す姿勢だという。
今回の調査における件数の増加傾向は、こういった行政の姿勢に呼応するカタチで、現場側のいじめの積極的認知と早期対応の方針が浸透してきており、いじめ認知の姿勢に変化がみられてきた兆候と考えられる。
暴力行為についても、同様に増加傾向がみられた。小学校では暴力行為が2万2847件、前年度と比べ34%増えた。文科省はいじめ認知の姿勢が浸透するなか、暴力行為についても「教員が抱え込まず報告するようになった」と分析。「感情のコントロールができない子供が増えた」との声も多かったという。
いわゆる重大事態に発展する前の段階で歯止めをかけようという政府の取り組みは、いじめ認知件数の大幅な増加などから、一定の効果が出ていることが伺え、現場の意識改革という意味でも大きな前進と言えるだろう。しかし真に重要なのはこれからであって、いじめ認知件数の増加が目的化してしまっては本末転倒だ。日々の業務に追われる教員への社会的な支援や、クラス担任の他に専門の担当者を配置するなどの、第三者的な視点の積極的な活用を行うことなど、いじめ発見からいじめ解決へ向けた、次のステップへと進む段階にきているといえそうだ。(編集担当:久保田雄城)