無料低額宿泊所の法規制とその背景にあるもの

2017年12月22日 06:04

画・無料低額宿泊所の法規制とその背景にあるもの

国内537施設ある無料低額宿泊所を、厚生労働省が法律で規制する。規制の内容は施設の環境など様々な点で基準を設けるといったものだが、その目的は生活保護受給者からの不当な詐取を行う貧困ビジネスの排除にある。

 無料低額宿泊所とは、主に生活保護を受給している人が利用できる施設のことで、都道府県知事に届け出ることで開設することができる。現在、届け出ている施設は全国に537施設あり、生活保護受給者が利用することを想定して利用料金は低額または無料である場合が多い。しかし、そんな無料低額宿泊所の中には入所者の生活保護費などを不正に詐取するケースも決して少なくない。こうした事例を受けて、厚生労働省は無料低額宿泊所を法律で規制する方針を固めた。

 厚生労働省はこれまでにも無料低額宿泊所に対して、利用料金や施設の広さなどについて一定のガイドラインを設けている。ただし、この基準に満たさなかった場合でも法律的な罰則はなく、中には厚生労働省が定める基準を満たしていない施設も多いといわれている。さらに、これらの宿泊所のサービス内容というものは外見上は全く判断ができないため、生活保護受給者から詐取する「貧困ビジネス」の温床ともなっている。今回の法律による規制は、こうした貧困ビジネスを排除するということも目的のひとつといえるだろう。

 今回の法律規制の内容としては、無料低額宿泊所の施設ごとの最低基準を設定し、それを下回る場合には行政指導や実地調査といったことが行われる。その結果、事業改善命令や業務停止なども出せるようになる。また、支援を必要とされる人の情報を関係行政機関が共有できるような仕組みを導入し、自立支援に積極的に取り組む施設に対しては財政支援も視野に入れているという。

 こうした厚生労働省の法規制は、生活保護者を標的とした貧困ビジネスを排除することが目的のひとつであることは先ほども説明した通りだが、ここまで貧困ビジネスが横行してしまった背景には、国も黙認していた部分があった事実も否めない。生活保護の受給者の管理には多大な労力が必要であり、その管理を宿泊所という形で行ってくれる業者の存在は国にとっては都合が良かった部分もあったのかもしれない。しかし、今回の法規制は、無料低額宿泊所そのものをしっかりと政府が管理をするという意思表示と考えることもできる。

 生活保護については様々な課題が山積である。貧困ビジネスもこうした問題のひとつであり、今回の法規制はその問題を解決するための糸口となるかもしれない。まずは無料低額宿泊所の現状をしっかりと把握し、入所者たちが無理なく過ごせるような環境整備をしていくことが重要だ。(編集担当:久保田雄城)