厚生労働省は、生活保護費のうち食費や光熱費などといった生活に必要な費用の見直しの検討に入った。見直しの対象となるのがいわゆる「生活扶助」と呼ばれるカテゴリーのもので、食費や衣類などの購入を賄うものである。その引き下げ幅については最大で1割程度とされており、引き下げの根拠としては、生活保護を受けていない低所得世帯の生活費水準に合わせることを想定している。
生活保護費の中でも生活扶助の基準費用については5年に1度支給水準を見直すようになっている。来年度がその見直しの年度に該当するということもあり、厚生労働省では生活保護費そのものの見直し検討に入っている。見直しの根拠となるのは生活保護を受給していない一般所得世帯の消費支出統計であり、前回の見直し時期だった2013年度にも生活保護費が引き下げられている。
ただし、一律的な生活保護費の減額については反発も多い。一般的には世帯の人員が増えればそれだけ支出も増えるとされており、世帯あたりの人数によって最適とされる費用も異なってくるからだ。また、生活扶助に関する費用が引き下げられることによって最低生活水準を守ることができなくなるのではないか、との懸念もある。特に前回の生活保護費見直し時期の2013年度には3年間で6.5%の引き下げとなったことで生活保護受給者が訴訟を起こすまでに発展している。 生活保護費の引き下げは、消費や景気の低下にも影響する可能性が高まるため、安易な値下げについては様々な方面からの反発も多いのが現状だ。
もともと生活保護費についてはその金額も含めて一般所得層からの批判が多い。生活保護費として受給する金額は、新卒の初任給なみということもあり、1割の引き下げであってもそれほど影響は無いのではないか、とする意見もある。ただし、生活保護というものはただ単に受給できる金額だけで測ることができるものではなく、不正受給を受けている人がいる等、こちらも多角的な視点からの判断が要求される。また、生活保護費の引き下げは消費や景気の低下につながる可能性もあることから、消費支出の統計から判断した結果であるとはいえ、引き下げは考えるべきではないとする反対意見も少なくない。
高齢化が進み、税収が低下している状況の中で、生活保護費についても財源の確保が難しくなっている。生活保護を受けていないから自分は関係ない、ということではなく、なぜ生活保護費の減額が必要なのか、ということを国民一人ひとりが考えるべき時期にきているのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)