海外での臓器移植に保険給付

2017年12月25日 06:18

画・海外て_の臓器移植に保険給付

厚生労働省は海外での臓器移植にかかる費用について、公的保険の給付対象とする方針を固めた。海外療養費制度の適用範囲を拡大して活用する。利用には様々な条件があるものの、導入されれば海外での臓器移植の負担軽減が期待できる。

 臓器移植といえば、多くの人は海外で移植手術を受けるということを連想するのではないだろうか。臓器の移植が必要な場合、日本では様々な理由で難しい場合が多く、ほとんどの場合は海外での移植手術を受けることになるが、この場合問題となるのが海外への渡航費や宿泊費、医療機関へ支払う費用である。ただでさえ特殊な治療である移植に必要な費用は高額であり、そこに様々な諸経費が発生するため、海外での移植手術は億単位の費用がかかる。そこで厚生労働省は、海外での臓器移植手術に保険給付をする方針を固めた。

 現在、海外での移植手術を受ける場合に発生する費用については全額自己負担となっている。先述の通り億単位の費用は患者やその家族が負担することになるため、海外での臓器移植を受けるうえで大きなハードルとなっている。この海外での移植手術に必要な費用について、公的保険の給付対象となることで少しでも患者やその家族の負担が軽減されると期待されている。

 健康保険では海外の医療機関にかかった場合、治療費の払い戻しを受けることができる海外療養費制度というものがある。海外での臓器移植を受ける場合についても、この海外療養費制度の適用範囲を拡大し、その費用を割り当てることで対応する。給付額は心臓移植の場合で1000万円前後を想定している。給付の対象となるためには、日本臓器移植ネットワークに登録していることと、海外での移植を受ける緊急性が高いと専門医が判断していることの2つの条件が必要となる。そのため、海外での臓器移植を受けようと考える人にとって全員が全員公的保険からの給付を受けることができるというわけではない。健康保険から給付を受けるということになるため、安易な渡航移植を防ぐための条件設定といえるだろう。

 日本では2010年に臓器移植法が改正され、15歳未満の子供からも臓器移植のための提供が可能となった。日本国内での臓器移植の症例が少ないのは、こうした法律の整備が遅れていたことも関係しており、海外で移植を受ける人が多いひとつの要因となっている。また、法律の問題がクリアできたとしても、移植が可能な医療システムについても国内ではまだまだ不備が多く、今なお海外での移植を希望する人は少なくない。国内で移植を必要とされる人はおよそ1万4千人以上とされており、今回の健康保険からの公的給付が導入されればこうした人たちにとっても移植への道が開かれる可能性は高い。より多くの人の命が救われるように、保険制度の整備とともに国内の医療システムについても環境整備を進めていただきたいところである。(編集担当:久保田雄城)