浸透しない差別解消法 障害ある人の約9割が差別・偏見「改善していない」 合理的配慮の必要性

2017年12月25日 06:23

画・浸透しない差別解消法 障害ある人の約9割か_差別・偏見『改善していない』 合理的配慮の必要性

障害者差別解消法施行から1年以上が経過し、法律が「浸透していない」が92%、法施行以降も差別・偏見が「改善していない」が89%など、多くの障害ある人が法施行による効果の実感に乏しいことがわかった。

 障害のある人の就労支援を中心にソーシャルビジネスを展開するゼネラルパートナーズは、障害のある当事者326名を対象に、差別・偏見に関するアンケート調査を実施した。2016年4月に障害者差別解消法施行から1年以上が経過したが、調査結果からは法律が「浸透していない」が92%、法施行以降も差別・偏見が「改善していない」が89%、合理的配慮を「受けやすくなったとは思わない」という回答が84%と、依然として多くの障害のある人が法施行による効果の実感に乏しいことがわかった。

 障害者差別解消法は、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止したもの。また、この法律では、役所や事業者に対して、障害のある人から社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者の場合は対応に努めること)が求められている。なお、「障害者差別解消法」は雇用以外に関するものを対象としており、雇用に関するものについては、同時期に施行された「改正障害者雇用促進法」にて規定されている。

 障害者施策の基本的方向を定める「障害者基本計画」(2002年12月24日閣議決定)においては、我が国が目指すべき社会として、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を掲げている。「共生」を阻害するのは他でもない「差別」である。東京人権啓発企業連絡会のHPによると「差別」とは、“「本人の努力によってどうすることも出来ない事柄で不利益な扱いをすること」”と書かれている。健常者は過度の予断を排除し、障害のある人へ配慮を行う必要性がある。そこで重要となるのが、合理的配慮だ。

 文科省によると、「合理的配慮」とは、“「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」”と定義されている。障害のある人を特別扱いする視点ではなく、異なる個性を持った集団が「共生」するための環境調整が合理的配慮だ。

 過度の配慮は「差別」となる可能性もある。障害のある人が著しく不快な思いをしたらそれは問題となる。しかし逆も又然りで、声を挙げることが可能な状況ならば、障害のある人側にもそれを伝える義務がある。相互に出来る限りの配慮をしていくことが「共生」社会構築には欠かせない要素といえるだろう。2014年1月、日本は国連障害者権利条約を批准し「共生」社会への歩みを強めた。批准にあたり必要な国内法整備として、障害者基本法を改正、障害者差別解消法を制定した経緯がある。差別の問題は障害のある人を含めて今後の流動的な社会において最重要となっていく課題でもある。障害のある人は声を挙げること。健常者は障害のある人の声を知ること。トランプ政権が何かと話題となっている昨今、異なる価値観への配慮、「共生」への歩みは普遍的かつトレンディなテーマといえそうだ。(編集担当:久保田雄城)