生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研(渋谷区)のレポートによると、8割を超える主婦が、「冬は、他の季節に比べて、電気料金が高くなりやすいと思う」と回答した。暖房機器の使用時間が増え、それに比例して電気使用量も増加していくわけだが、さらに使用量に比例して増加する「再エネ発電賦課金」が電気料金とともに徴収されている事についてはあまり知られていないようだ。今回の調査対象者に、「再エネ発電賦課金」が請求されている事実について聞いたところ、知っていた人はわずか17%だった。
「再エネ発電賦課金」は、2012年7月1日より施行されている、「FIT(固定価格買取制度)」といわれる制度にもとづいて設定されている。「FIT」とは、再生可能エネルギーの導入拡大を図ることを目的に国が定めた仕組みのことで、電力会社は、再生可能エネルギーで発電された電気を割高な価格で一定期間、発電事業者から買い取ることが義務づけられている。その費用は「再エネ発電賦課金」として、企業や家庭といった電気の使用者の負担となっている。では、いくら払う必要があり、どのような料金体系となっているのか。
経済産業省は2017年5月分の電気料金から適用する賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の単価を、企業や家庭が利用する電力1kWh(キロワット時)あたり賦課金の新単価2.64円とした。2017年4月分までの単価は2.25円で、伸び率は17%。総務省統計局の家計調査データ(2014年)をみてみると、家族構成が二人以上の世帯の平均電力使用量(kWh)は平均で、毎月約400kWh程度となっているので、単純試算すると400(kWh)×2.64(円)=1056円となる。年間にすると12672円が電気料金に上乗せされる計算だ。300kWhの場合だと、300(kWh)×2.64(円)=792円。年間で9504円。およそ100kWhの違いで年間3168円の差額となる。この支出を大きいと取るかは世帯ごとの判断であるが、電気使用量に比例して電気料金に上乗せされる項目について、認識を持つに越したことはない。
「再エネ発電賦課金」は年々増大しており、将来にわたっても大幅に増加する見通しだ。2030年度の時点では最大で3.6兆円となる試算(電力中央研究所)が出ており、その家計の負担を消費税に置き換えると、約1.6%分と同程度になるともいわれている。2014年の日本のエネルギー自給率は6.0%、主要国の中では突出して低い数値となっている。エネルギー自給率の向上は日本の大きな課題の一つである。化石燃料への依存度の低下につながり、燃料価格の乱高下に伴う電気料金の変動を抑えることも可能になると考えられている。
日本のエネルギー事情に詳しい、電力中央研究所の朝野賢司氏は、「今後ますます発電量が増えていくと予想される、太陽光などの再生可能エネルギーには、「コストが割高」「発電量が不安定」などの課題がある。こうした中では、コスト面だけでなく、安定供給などの視点からもエネルギーミックスは重要です。「再エネ賦課金」は一般生活者が知らないうちに、どんどんあがっています。まずは、日本のエネルギー事情について正しい理解をした上で、消費者みずからが考える必要があると思います。」と語った。
実際に支払っている「再エネ発電賦課金」の額は、家庭に届く「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)で確認可能である。(編集担当:久保田雄城)