アマゾン戦略と雑誌発売日変更で、「版元+取次+書店」伝統的関係の機能不全が浮き彫り

2018年02月04日 14:38

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書店に並ぶ雑誌の発売日は、月末に集中していた。が、ここにきて発売日を変更する動きが急だ。破綻寸前の出版物流が原因だ。一方で、取次を介さず取引するアマゾンの動きは伝統的な「取次+書店」の関係に楔を……

 国内の主要出版社10数社が、発行している雑誌の発売日を変える動きが出てきた。これまで雑誌の発売日は毎月10日や男性誌の24日、自動車専門誌の26日、女性ファッション誌の27日などに集中していたが、これを避け、分散させる方向で検討をはじめている。定期的な購読者の混乱を招きかねない措置だが、その背景には出版物流の問題点が潜んでいる。

 注文に合わせて出荷する本を1つひとつ選んで書店に配送する物流コストが、出版物流に赤信号を送ったのである。

 出版大手の小学館は、これまで毎月10日に発売していた雑誌「サライ」や「BE-PAL」などの発売日を9日に1日早める取り組みを、この1月からはじめた。この春から夏にかけて10社以上の出版社が雑誌発売日見直しに動く。

 日本の書籍や雑誌など出版物の発売日は版元と取次会社で決め、取次会社が全国の書店に配送する。なかで雑誌の発売日の多くは、毎月25日前後が多く、6割がそこに集中する。そのため、配送する出版物の量は、発売日が集中する日には最大6倍に達するという。こうした負担に、出版物流が破綻寸前なのだ。

 出版物流は未明から早朝までの深夜労働が中心だ。1日に少なくとも40カ所に重たい本の梱包を届け、多い日は50~60カ所に上る。深夜労働は嫌われ、若者がまったく集まらないため、物流各社は人材確保に躍起だという。ただし、日本出版販売(日販)などの取次大手は、物流の値上げ要請には簡単には応じない。

 出版物流の要となる取次最大手の日販や業界2位のトーハンなども、物流会社からの値上げ要請に応じていては、採算が維持できなくなりつつあるためだ。

 大きな要因は、配送の小口化がある。これが物流会社の負担となる。国内書店数は、10年間で25%減少した。が、雑誌を扱うコンビニは35%も増えた。しかも、コンビニに納品する雑誌は1店舗で多くても5冊。大手書店の1店舗分の10分の1もない。出版物配送先は、合計1万件も増えたが、運ぶ出版物の量は30%以上も減っているのだ。

 こうした状況に耐えきれず、出版物流から撤退する企業が急増したことも、取次各社の業務を圧迫する。この5年間で日販の委託先は7社も撤退した。新たな委託先は見つかっていない。

 2017年、取次各社は、物流会社の値上げ要請を受け入れた。そのため委託費は結果的に増えた。ただし、配送する書籍・雑誌の量は、出版不況の影響から1割も減少した。

 一方で、これまでの伝統的な“取次+書店”の関係を見直す動きもある。

 アマゾンジャパンは今後、書籍や雑誌の仕入れを取次を介さずに印刷会社から直接行なう。アマゾンは取次大手の日販と在庫のない書籍については取引をすでに打ち切った。出版社だけでなく印刷会社との直接取引で、取次会社を前提とした書籍の流通構造が大きく変化しそうだ。

 アマゾンは日販など取次を介さずに書籍や雑誌を仕入れるため、これまで取次会社が得ていた20%ほどの利益を出版社などと折半するとみられる。確かに今のところアマゾンとの直接取引に躊躇する出版社は多い。それでもアマゾンの書籍・雑誌の販売力は強力で、取引条件によっては直接取引に乗り出す出版社も少なくないと思われる。

 前述したが伝統的な「物流会社+取次+書店」は、ともに体力の限界が近い。発売日の集中から分散への動きは、出版市場の縮小という大きなトレンドを変える施策ではない。ペーパーメディアの発行部数減を食い止める具体策が求められている。(編集担当:吉田恒)