高齢者人口の増大とともに高齢者虐待の認知件数が増加しているようだ。12日、厚生労働省は「高齢者虐待防止法」に基づく対応状況等に関する調査結果を公表した。この調査は防止法の制定を受けて2007年度から行われているもので、全国の市町村や都道府県での高齢者に対する虐待への対応状況を取りまとめたものだ。
調査結果を見ると、16年度中の自治体が虐待であると判断した擁護者(家族、親族、同居人等)の虐待判断件数は1万6384件で、前年15年度から408件増加し、伸び率で2.6%の増加となっている。自治体が受理した相談・通報の件数である相談・通報件数は、16年度中の擁護者によるものが2万7940件で、前年15年度から1252件増加し、伸び率は4.7%の増加となっており、判断件数より相談・通報件数が大きき伸び率になっている。
一方、介護老人福祉施設など養介護施設または居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者によるものは、虐待判断件数が452件で、前年15年度に比べ44件増加し、伸び率で10.8%、相談・通報件数は1723件で前年と比べ83件の増加で、伸び率は5.1%で、判断件数の伸び率が相談・通報件数のそれを上回っている。
長期的な推移を見ると、擁護者によるものが、06年度の判断件数が1万2569件、11年度で1万6599件、16年度が1万6384件、同じく相談・通報件数が06年度は1万8390件、11年度2万5636件、16年度が2万7940件となっている。
養護施設従事者等では、判断件数が06年度に54件、11年度151件、16年度が452件、相談・通報件数が06年度で237件、11年度は687件、16年度が1723件と、擁護者・施設従事者、判断件数・相談・通報件数の全ての件数で増加傾向にあり、特に施設従事者によるものの相談・通報件数の増加傾向が著しい。
高齢者人口の増加とともに虐待の相談・通報件数が増大するのは自然の成り行きとも言える。介護等の現場において人手不足や技能の不足が虐待につながるケースも多いであろう。全体の推移として判断件数の伸びより相談・通報件数の伸びが大きくなっていることが読みとれる。これは自治体の対応が高齢者増加という社会の変化について行っていないとも考えられる。自治体職員も含め介護現場での人手不足を解消する施策の実施が急務である。(編集担当:久保田雄城)