求人倍率の直近データ、3月分の有効求人倍率は1.59倍と高い水準を維持しており日本の産業は深刻な人手不足の状態にあると言える。中でも建設躯体工事の職業は10倍を超えており、建設業で特に人手不足が深刻化している。
この背景にはオリンピックのスケジュールが近づき、民間開発も含めたオリンピック関連の工事がラストスパートにはいったことが影響している。これに加え団塊の世代が70歳に達し、労働市場から退出しはじめ建設業界からも多くの労働者が退出して求職者数は減少傾向にある。
直近の対応策として外国人労働者で不足分を補っているようであるが、これは人口動態から来る現象であり、長期的な問題である。長期的な人手不足を解消するため建設業界のIT化による生産性の向上が求められているが未だ追いついていけていないのが現況だ。
人材紹介業のヒューマンタッチ総研が「マンスリー・レポート5月号」の中で政府統計用いて建設業の人材市場の現況について分析している。レポートによれば、厚労省「毎月勤労統計調査 2017年結果確報」での17年における建設業の一般労働者の年間実労働時間は2120時間で、全産業より約100時間も長くなっている。これは製造業より67時間、情報通信業より157時間も長いということになる。
年間出勤日数を計算した結果、建設業の年間出勤日数は257日となり、全産業平均より15日多く、製造業と比べると19日、情報通信業より24日多いということになる。これらのデータから建設業は他産業より労働時間が長く休日が少ないと言うことが言える。今後、人材を確保していく上でも、残業削減、週休2日制導入等で労働環境を改善していく必要がある、とレポートは指摘している。
長時間労働の解消に関する政府の支援に関しては、厚労省が残業上限規制達成の中小企業に最大150万円を助成する「時間外労働等改善助成金」という制度を設け18年度予算計上しており、今年度からは建設業も支給対象に加えられた。この制度を利用することで、出勤や退勤を管理する労務管理用ソフトウェア導入や人材確保に向けた取り組み、建設現場の生産性向上に資する設備・機器等の導入などの取り組みに対して、その成果に応じ助成金を受けることが可能となる。
直近の人手不足解消のみでなく、長期的な人手不足解消のためには労務管理に関してもIT化による労働生産性の向上は必須である。政府の支援施策を有効活用し効率的な建設産業の実現を期待したい。(編集担当:久保田雄城)